Updated:2023.09.26

オフィス構築のプロフェッショナル「ソーシャルインテリア」が、WeWork に入居する戦略的な背景とは?

サブスク家具でオフィス構築を支援するプロフェッショナル

社員ヒアリングを行いながら専用オフィスをカスタマイズ

オフィス構築は、経営者がコミットすべき重要な戦略

フレキシブルオフィスやシェアオフィスは、「イニシャルコストを抑えられる」「組織の変化に柔軟に対応できる」というメリットがある一方、「スペースの仕様が決まっており、内装やレイアウトの自由度が低い」というのが一般的です。

しかし WeWork なら、フレキシブルオフィスやシェアオフィスのメリットを享受しながら、自社の専有スペースを戦略や希望に合わせてカスタマイズすることもできます。カスタマイズの方法は複数の選択肢がありますが、その1つが家具のサブスクリプションサービス(以下、サブスク家具)の利用です。

同サービスの提供とともに、オフィス構築支援を行う株式会社ソーシャルインテリアは、WeWork の専用オフィスを契約し、大幅なカスタマイズを加えています。同社CEOの町野健氏に、 WeWork 入居を選んだ理由や、オフィス構築の要諦などについて伺いました。

サブスク家具でオフィス構築を支援するプロフェッショナル

——ソーシャルインテリアの事業の概要を教えてください。

町野:当社は2016年11月に株式会社subsclifeとして創業し、2018年3月より家具・家電のサブスクリプションサービス(サブスク家具)「サブスクライフ」を提供開始。2022年3月には、サブスク事業にとどまらず、「いいモノと社会をつなぎ、家具の循環型社会づくり」をミッションとするプラットフォームとなるべく、社名を「社会と家具」をかけ合わせた「ソーシャルインテリア」に変更しました。

現在は、「サブスクライフ」、ブランド家具・家電をお得に買える「サブスクライフ オフプライス」に加え、企業向けにオフィス構築支援や空間提案も行っています。通常、新しいオフィスを構える際には、数百万円、数千万円単位の初期投資が必要となり、投資回収にかなりの歳月を要しますが、当社サービスを利用することで初期費用を大幅に抑えられます。

これまで当社は家具・家電のサブスクサービスを通じ、必要とする企業や個人向けに理想的なソリューションを提供してきましたが、同時に当社のドメインはインテリア業界ですので、つくる人、販売する人の支援になる活動を今後も意識しながら事業を広げていきたいと思います。

——今回、東京都港区北青山の「 WeWork ジ アーガイル アオヤマ」に本社を移転。67席の専用オフィスをご契約いただいています。

町野:本社を WeWork に移転したのは2022年12月のことでした。出社に関する基本方針は「週3日出社+週2日リモート」としていますが、最終的には部署ごとに定めています。なかには、フルリモートで働く社員もいます。専用オフィスのスペース内はフリーアドレスで、現時点では50席前後が常に使われている状況です。

社員ヒアリングを行いながら専用オフィスをカスタマイズ

—— WeWork にご入居いただいた経緯を教えてください。

町野:移転計画の発端は、表参道に借りていたオフィスのスペースが手狭になってきたことです。そこで「現状のオフィスを拡張する」「新たな賃貸オフィスに移る」「シェアオフィスに移る」などの選択肢を挙げ、イニシャルコストやランニングコストを比較しました。当社はスタートアップということもあり、キャッシュマネジメントの重要性は極めて高く、最もイニシャルコストを抑えられる「シェアオフィスに移る」を選択しました。

——入居検討時、他のシェアオフィスも比較されましたか。

町野:もちろん比較しましたし、いくつかのところには内見もしました。立地を除き、ファンクション(機能)としては、どのシェアオフィスも大差はありませんでした。しかし、デザインやソフトウエアは、それぞれ特徴がありました。

私たちはオフィス構築を支援する会社であるため、自分たちがどのようなオフィスをどこに構えているかはブランディングに直結する極めて重要なポイントです。その意味で、 WeWork はインテリアショップが周辺に多数立ち並ぶ一等地にあり、アクセスも素晴らしく最適と感じました。これはあくまで主観ですが、 WeWork のデザインはシリコンバレー感があり、われわれスタートアップとしては魅力を感じました。

ソフトウエアの面においても特徴的だと感じました。 WeWork には、来客時の受け付け対応をはじめ、私たちが日々の仕事に集中できるように多様なサポートをしてくれる「コミュニティチーム」がいます。このコミュニティチームは、コミュニケーションが非常にカジュアルで、細かいことにも相談に乗ってくれます。アフターフォローも手厚く、いつも助けられています。シェアオフィスに入るのは初めてで、「戸惑うことも多いのでは」と懸念しましたが、心配することはありませんでした。

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——入居後は WeWork の環境をそのままお使いいただくのではなく、貴社が取り扱うサブスク家具を活用してカスタマイズされています。レイアウトや家具など、どのような工夫をされたのでしょうか。

町野:漠然とレイアウトを決めても社員の満足度は上がりません。まずは私がレイアウトのたたき台をつくり、それをもとに社員に「オフィスに求めること」などをヒアリングしました。ワイガヤのできる共用スペース、仕事に集中できる専用スペース、リラクゼーションスペースを設けるなど、社員の要望を取り入れつつ最終的なレイアウトと家具の配置を決定しました。

——入居後の変化や効果、社員の反応などを教えてください。

町野:入居前と後で、社員に対してサーベイを実施しました。入居後、満足度が大幅にアップし、それに伴い出社率も上がっています。また、採用活動でのクロージング(入社意欲を高める内定者フォロー)がかなり強化されました。採用面談においても、来社してもらうことで「ここで働きたい」とより感じてもらえているようです。入社後についても、 WeWork が提供する無料で楽しめるビールが、早く打ち解けるのに一役買ってくれています。

——入居後の変化として、想定外だったことはありますか。

町野: WeWork のラウンジ(入居する他の企業と共用しているオープンスペース)の居心地が良すぎるのか、一部の社員は自分たちのオフィスにあまり居ないということが分かりました。もちろん、ラウンジにいることで多様な価値観に触れることができ、ポジティブな面があることは理解していますが、経営者の本音としては「せっかく力を入れて用意したオフィスなのに」とも思います(笑)。

ただ、これには重要なインサイトも含まれていると考えています。実は、多くの企業で「フリーアドレスの導入や、複数の働く場所の設定で、組織の結束が弱まってしまった」という結果が出ているからです。チームビルディングを強化したい企業は、気をつけるべきポイントといえます。われわれはそうした気付きから、ラウンジと比べても遜色ない居心地の良さを目指して、専用オフィスをカスタマイズしました。

——具体的に居心地の良さを高めるための工夫を教えてください。

町野:私たちが提供する家具も WeWork が提供する内装やラウンジも、全てハードウエアです。ハードウエアを完璧に整備すれば社員が「居心地良いな」と感じるのかといえば、そうではありません。ソフトウエアにも気を使う必要があります。当社の場合、オフィス運営チームでお菓子を買ってきて定期的に振る舞ったり、アロマオイルで香りのある空間にしたり、感性を刺激するアートを配置したりしている他、理学療法士によるストレッチイベントを開催したりしています。

オフィス構築は、経営者がコミットすべき重要な戦略

——ショールームとしても、オフィスを活用されているとお聞きしています。

町野:取引先(顧客)には、積極的にオフィスに来てもらい、サブスク家具を活用したオフィスづくりを体験してもらっています。

私たちは、コロナ禍の期間で、要件を端的に伝えるような効率性重視のリモート商談に慣れましたが、対面での商談ならではのメリットは大きいものがあります。さらに居心地の良いオフィスであれば、商談の会話も滑らかになります。

居心地の良いオフィスを構築することで、取引先は当社に対してよい印象を抱き、サブスクライフを活用して同じようなオフィスをつくりたいと考えます。一方で社員は、自分の会社に誇りを持ち、友達や家族に自慢したくなったり、より頻度高く出社したくなったりします。さらに求職者は、ここで働きたいという思いを強めるでしょう。このように、オフィス次第でさまざまなステークホルダーに対するブランディングに好影響を与えることになります。

 

——最後に、オフィス選び、オフィスづくりを検討している読者に向けてアドバイスをお願いします。

町野:先ほど、オフィス構築のために社員ヒアリングをした話をしました。社員の声をオフィスに反映させることは、とても大事なことだと改めてお伝えしておきたいと思います。その上で、誤解してはいけないのは、ボトムアップ(社員の声)の総和では、戦略的なオフィスの構築はできないということです。

最も重要なことは、「経営者がどうしたいのか」。経営戦略にもとづいた設計と構築、機能を持たせることが非常に大切です。当社の今回のケースでは、経営者である私がご来社されるお客様への「おもてなし感」にもこだわりました。具体的には、おもてなし感を演出するため、入口の正面には、上質なビンテージのダッシュボードとソファを配置しています。取引先だけでなく、出社する社員たちにも常に感動を与えていきたいという思いから出たものです。「社員もまた大事なステークホルダーである」ということをいつも念頭に置きながら、経営者としてオフィスづくりにコミットすることで、良い働く場所がつくれると思います。

* 本記事は2023年7月に実施したインタビューを元に作成しています

 

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