Posted:2022.01.19|Updated:2023.11.13

JR東海は、WeWork 活用によって本社とは異なった「文化」を取り入れ、イノベーションの「接点」をつかむ

WeWork 目的はイノベーション創出のための「接点をつくること」

接点が生まれる設計。使えるものをちゃんと使えば、必ず接点ができる!

WeWork による“つながり”の広がり

本社から“近すぎず、離れすぎず”の場所を選んだ

東海旅客鉄道株式会社(JR東海)は、「技術領域を広げ、鉄道システムの革新や新たな価値を創造すること」を目的に、2020年7月イノベーション推進室を立ち上げました。同推進室は「これまでにない接点をつくる」ことを目指して、2020年8月より WeWork 渋谷スクランブルスクエアの利用を開始。コラボレーションの種を見付けるなど、積極的に活用し、効果を実感されています。同社総合技術本部 技術開発部 イノベーション推進室担当課長の栗本豪氏に、 WeWork を軸としたコミュニティ、コラボレーションの取り組みについてお話を伺いました。

WeWork 目的はイノベーション創出のための「接点をつくること」

──JR東海のイノベーション推進室について教えてください。

当社は東海道新幹線と静岡・名古屋地区を中心とした在来線を運行する鉄道会社です。鉄道事業以外にも当該エリアでの百貨店・ホテル・流通・不動産などの事業も展開しています。イノベーション推進室は、鉄道運行に関わるさまざまな技術を開発する技術開発部の中に2020年7月に新設されました。同室のミッションは、 鉄道の枠にとらわれることなく、技術領域を広げ、鉄道システムの革新や新たな価値を創造することです。

──JR東海にとってイノベーションの意義とは何なのでしょうか。

鉄道インフラは、先人たちの努力により生まれた技術に支えられています。これからも社会インフラである鉄道を高いレベルで提供し続けていくのが、私たちの重要な役割です。しかし、既存の事業だけを維持し続ければよいのかといえばそうとうは言えません。次世代のために、チャレンジをしていかなければいけないと考えています。

例えば、現在、実現に向けて開発を進めている超電導リニアで使われる超電導磁気浮上方式の技術は、新幹線の開業よりも前に研究が始まりました。同じように長いスパンで考え、今から数十年後に花開くイノベーションの種を探していく必要があります。

*撮影時のみマスクを外しています。

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──イノベーションの種を探すために、 WeWork に入居されたのでしょうか?

はい。私が WeWork への入居を発案しました。イノベーション推進室を新設する話が持ち上がり始めた2019年10月ごろ、すでに WeWork を利用していたJRグループの他社の担当者からオフィス見学に誘われたのがきっかけでした。立地もよく、内部もとてもきれいなスペースで、夕方にはパントリー( WeWork 内に設置された無料のドリンクスペース)で、ビールを交わしながら、他社の人とフランクな交流がありました。

──その見学が、 WeWork への入居発案のきっかけに?

誘っていただいた方から「 WeWork はイベントなどを通じてさまざまな企業との接点をつくれる場所で、そのための仕掛けができている」と聞かされていましたし、実際に見学した時、パントリースペースでの交流などを通じて、その価値を実感できました。その体験が大きなきっかけになりました。

私は、イノベーションに関する外部研修への参加を通して、「外部との接点」の重要性を痛感していました。イノベーション推進室には、「これまでにない接点をつくる」ことが不可欠です。 WeWork はそれにふさわしい場所だと感じました。他のフレキシブルオフィスも検討しましたが、スペースを借りるだけという印象が強く、 WeWork のようなコミュニティ形成型のスペースは他にはなく、ほぼ一択でした。

接点が生まれる設計。使えるものをちゃんと使えば、必ず接点ができる!

──2020年8月より WeWork をご利用いただいています。入居後、接点はどのように生まれていますか。

現在、2人分の専用オフィスを置き、それとは別にAll Access (オールアクセス)を4人分契約しています。

入居検討時に期待した通り、すでに接点が生まれています。私たちが入居した2020年8月というのは、 WeWork の入居メンバー専用アプリ「WeWork commmune(コミューン)」が開設されたばかりの時期で、 WeWork のコミュニティスタッフの薦めもあり、同アプリに自己紹介を投稿してみました。すると、多くの反応をいただきました。それをきっかけに同じ拠点の入居メンバーとの接点が生まれ、その方がまた別の拠点を含めたメンバーの方を紹介してくれて、接点がどんどん増えています。緊急事態宣言が解除され、パントリーでのビール提供が再開されましたが、仕事終わりにビールを飲んでいるときも、コミュニティスタッフの方が新たな接点を生み出してくれることもたびたびありました。

*撮影時のみマスクを外しています。

WeWork は、アメリカ発ですが、出会い頭に「HEY!」と言いながらハイタッチを交わすようなコミュニケーションは、恥ずかしがり屋の日本人には難しいかもしれません。でも、 WeWork には先ほど触れたような仕組み(接点ができる仕掛け)があります。

── WeWork は、すれ違いざまに会話が生まれるように廊下幅を設計するなど、あらゆるところにコミュニケーション促進の仕掛けがあります。ただ、文化の違いもあります。そこであらゆるメンバーが接点を持ち、仲良くなれるような提案を準備しています。

とてもありがたいと感じています。実際に情報発信すれば、大勢のメンバーが私たちのことを認識してくれます。使えるものを使えば必ず接点ができる。コロナ禍の影響で、今はリアルのイベントは開催が難しい状況ですが、今後はそうしたイベントでの接点にも期待しています。

WeWork による“つながり”の広がり

── WeWork での接点から、どんな取り組みが始まっているでしょうか。

まだビジネスに発展はしていませんが、ドローンの産業実装にむけた人材教育などを行う株式会社スカイピークさんと交流が生まれ、コラボレーションを検討しています。私も、この出会いを機にドローンパイロットの資格を取りました。また、フォントメーカーの株式会社モリサワさんからスピンオフした株式会社ZeBrandさんともつながりができ、社内向けのブランディングのトライアルを依頼しました。

──ともに WeWork 渋谷スクランブルスクエアに入居されているメンバーです。

はい。さらに WeWork による“つながり”は、新たな動きも生み出しています。当社および株式会社ジェイアール東海エージェンシーは、2021年10月にショールーミング事業(駅や商業施設などの共用スペースで新しい商品・サービスを紹介し、お客様の行動データを取得・分析、出品者に対してフィードバックする事業)の実証実験を名古屋駅で行いました。実はこの時、WeWork グローバルゲート名古屋に入居されている「PRE-STATION Ai」(スタートアップの創出・育成・展開を図る愛知県の拠点施設)で活動されている方々にも実証実験に参加協力頂けたのですが、これはWeWork での“つながり”のおかげもあって実現できました。このように WeWork を通して“つながり”が広がっていくのも、 WeWork の魅力だと実感しています。

*撮影時のみマスクを外しています。

本社から“近すぎず、離れすぎず”の場所を選んだ

──さまざまな接点が生まれているのですね。この結果は、イノベーション推進室の拠点を本社の外に置いたことも、大きいのでしょうか?

JR東海の本社機能は、名古屋駅と品川駅の2か所にあります。イノベーション推進室は、既存の文化(枠組み)にとらわれない活動を目指しています。そのため、より多様な接点が期待できる東京地区で、本社と一定の距離間を保てる「近すぎず、離れすぎない」距離感を考えた結果、渋谷という場所が最適だと判断し、 WeWork 渋谷スクランブルスクエアへの入居を決めました。新たな文化に触れ、本社とは異なるイノベーション推進室の文化が生まれつつあります。

──入居に際して会社からKPIのような具体的な目標設定を求められませんでしたか?

求められていません。私は本部長、部長、次長(準備室長)という3人を説得する必要がありましたが、準備室長には、実際に WeWork を見てもらうことで理解者になってもらい、決裁者である部長に対しては見学を通じて私が体感したこと、入居企業の意見、グループ内の実績、 WeWork の環境でイノベーション推進室にもたらされる効果をまとめた社内プレゼンテーションを行いました。本部長や部長の反応も良く、「面白そうだね、まずはやってみよう」という後押しが得られました。

*撮影時のみマスクを外しています。

──「多産多死」も覚悟しなければいけないイノベーション創出では、KPI設定が難しいとされます。大企業のイノベーション推進では上層部の理解を得ることが難しく、最初から明確な成果を求められるケースもあると聞きます。

イノベーション推進室の立ち上げ時から、私たちには大事にしている合言葉があります。それが「やってみなはれ」です。サントリー創業者・鳥井信治郎氏の口癖で、同社社風を表す言葉としてつとに有名ですが、当社イノベーション推進室でもその言葉を合言葉にしています。万が一にも事故があってはならない鉄道事業は、何を差し置いても「安全第一」ですから、運行も「やってみなはれ」ではいけませんが、イノベーション推進については、それとは“真逆の文化”を選択していただきました。

──日本のイノベーションにとって、「やってみなはれ」は素晴らしい文化だと思います。

イノベーションを創出してすぐに成果を出すことは難しいことだと思いますが、たとえ成果は上がらない短期間の活動だったとしても、そこに価値があるはずです。 WeWork には、その価値を形にする面でのサポートも期待しています。

* 2022年1月時点

・本記事は2021年10月に実施したインタビューを元に作成しています。

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