
VUCA時代と呼ばれる昨今、企業の持続的成長にはイノベーション創出力が不可欠であり、自前主義では発展が難しい時代になっているのではないでしょうか。この状況を踏まえ WeWork は、「多様な企業コミュニティ」「全国40拠点以上のネットワーク」「イベント開催経験とノウハウ」を活用したオープンイノベーションプログラムを提供しています。2024年度の取り組みは以下の通りです。
9月26日
・ WeWork Innovation Search Hub プロジェクト発表・事例共有イベント 概要
・最先端デバイスデモスペースの開始
10月23日
・大企業と自治体が描く未来への課題とテーマ ピッチ&ミートアップ イベントレポート (大企業と自治体から課題を発表)
12月19日
・WeWork FUTURE TALK INNOVATORS PITCH イノベーターによる未来への挑戦 イベントレポート(10月の課題発表に対する、イノベーターからのアイデアピッチ)
翌月の2025年1月に、マッチングした共創/協業先への連絡を行い、共創が始まりました。
そして、2025年7月17日、2024年度のプログラムに参加いただいた入居メンバーをゲストに迎え、これからオープンイノベーションを目指す企業に向け、共創へのヒントと事例、共に挑戦する仲間との出会いを提供するイベント「Open Innovation Demo-day」を開催しました。
<イベント概要>
WeWork Open Innovation Project 未来がはじまる共創のためのプログラム
共創の進め方 イノベーションを動かすリーダーたちのリアル
日程:2025年7月17日
場所:WeWork リンクスクエア新宿
登壇者:
・ジェイアール東海情報システム株式会社(JTIS)取締役 デジタル戦略部長 石川 勝隆 氏
・株式会社JR東日本情報システム(JEIS)テクノロジー応用研究センター テクニカルディレクター 山田 康弘 氏
モデレーター:
・WeWork コミュニティチーム 櫻井 麻貴

はじめに、WeWork コミュニティチームの櫻井より、WeWork が考えるオープンイノベーションとプログラム、本イベントの目的を説明しました。
櫻井:「人と場をつなぎ、共創が続く関係を育てる」というのが WeWork の考えるオープンイノベーションのビジョンです。そして、WeWork のオープンイノベーションプログラムは、点で終わらない継続的な共創が生まれる仕組みとカルチャーを醸成します。各ステージに最適化されたプログラムと、それを支える独自の共創エコシステムで、アイデアの種を具体的なビジネス成果へと育て上げます。本イベントでは、WeWork のオープンイノベーションプログラムを通して共創を進めるお二人のゲストとともに、改めてオープンイノベーションについて考え、自社の次のステップにつながる共創へのヒントと、挑戦する仲間との出会いを得ていただけたらと思います。

WeWork コミュニティチーム 櫻井 麻貴
続いて、オープンイノベーションを推進するゲストのお二人より、オープンイノベーション推進の必要性と課題を共有頂きました。
▪️企業におけるオープンイノベーションとその課題
JTIS 石川氏:
オープンイノベーションに取り組む主な理由は新規事業創出です。コロナ禍で東海道新幹線のビジネス利用が減少する中、これまでの収入源に頼るだけではなく新たな事業を創出し、経営基盤を強化する必要がありました。しかし、自社内だけではアイデア創出から市場投入までの時間がかかりすぎますし、顧客視点の欠如も認識していたということがあります。
オープンイノベーションにおける課題としては、
・共通の価値観やモチベーションを持つパートナーを見つけることの難しさ
・自社と同じような能力を持つ人材だけでは既存の枠に留まってしまうこと
・知的財産権を含む共創ルールや信頼関係の構築の難しさ
・継続的な改善を共に行うメンバー構成の難しさ
などがありました。
JEIS 山田氏:
オープンイノベーションは目的ではなく手段と考えます。JEISが目指すオープンイノベーションは、戦略的な提携による技術探索と取り込みと考えており、既存市場での新規製品開発や新市場開拓を目指し、POC(概念実証)から始めるアプローチを取っています。
そして、JEISが直面した課題としては、共創するパートナーとの、情熱や楽しさといった『想い』の共有です。また、社内においての情報発信の不足などから他部署からの理解が得られにくいという課題もありました。
櫻井:
WeWork の調査によると、オープンイノベーションには、①目的(ビジョン)共有 ②経営戦略との連携 ③社内体制文化 ④人材 の4つの壁があることがわかりました。特に、71%の企業が目的・ビジョン共有の壁に直面していました。これらを乗り越えるためにはどのような方法があるでしょうか。

左:株式会社JR東日本情報システム テクノロジー応用研究センター テクニカルディレクター 山田 康弘 氏<br /> 右:ジェイアール東海情報システム株式会社 取締役 デジタル戦略部長 石川 勝隆 氏<br />
▪️オープンイノベーション成功の鍵
JTIS 石川氏:
オープンイノベーション成功の鍵の一つは、多様な視点を持つメンバーで構成された座組を組むこと。あとは 迅速な意思決定とパッションも不可欠ではないでしょうか。
JEIS 山田氏:
「情熱」と「熱意」は大切です。ワクワク感を共有し、多様な人々を巻き込むことで変化を生み出します。熱意ある人々と共に取り組むことはとても重要です。
JTIS 石川氏:
共通の価値観、モチベーション、自分たちとは違う視座視点を持っている人との出会いを目的に、我々はWeWork に入居しました。WeWork の開催するイベントや日々オフィスを利用する中で、多くの入居メンバーとの出会いがあります。その中で、一緒に課題を乗り越えてくれそうなメンバーかどうかは、会っていろいろな話をしてみないとわかりません。数回のミーティングではなく、何度も顔を合わせ、時には仕事から離れたところでの雑談も含めて会話を重ね、想いもリスクもシェアすることが大切だと思います。これにより、互いの得意なことや考え方を理解し、信頼関係を築くことができると思います。
櫻井:
WeWork のオープンイノベーションプログラムは壁を乗り越えるための支援として、
①目的(ビジョン)共有 → ピッチの機会提供
②経営戦略との連携 → 報告・PRのサポート / デモデーの開催
③社内体制文化 → イノベーション人材育成コミュニティの形成支援
④人材 → 知識や人脈を得られるワークショップの開催
などを行っていく予定です。
▪️2024年のオープンイノベーションプロジェクトで誕生した事例
続いて登壇いただいた両氏に、WeWork で出会ったイノベーターたちとの共創事例をご紹介いただきました。
JEIS 山田氏:
JEISは2024年のオープンイノベーションプログラムに参加し、現在も数社との取り組みが進んでいます。事例をいくつかご紹介しますと、「中長期イノベーションを、全国の大学研究室から公募する」をテーマにピッチを行った 株式会社PRES と大学との産学連携マッチングが実現しました。この取り組みでは、JEISが提示した「線路の保線作業における効率化」という課題に対し、PRESが全国の大学教授から8つの研究提案を集め、その中から3つの有力候補を選定しマッチングを進めています。
そして、「四足歩行ロボットGo2による巡視自動記録」をテーマにピッチを行った株式会社ポジティブエッジ とは、提案を現場の方と計画を詰め解像度をあげた取り組みが進んでいます。ポジティブエッジが開発した犬型ロボット「Go2」は、機動力が高く、線路の巡回作業の効率化だけでなく他のフィールドにも適用できる可能性を秘めています。現在、このロボットの導入に向けた契約締結を進めています。

JTIS 石川氏:
JTISは、「① 次世代型キャリア支援サービス② 美大・高専生との共創型課題解決プラットフォーム」をテーマにピッチを行った株式会社キャリアボット と、学生との共創プロジェクト「大学生DXイノベーションブートキャンプ」を開催しました。このイベントは、東海道新幹線を利用するインバウンド旅行客の困りごとをテーマにカスタマージャーニーマップ作成やアイデア発表を3時間で行うものでした。キャリアボットには、参加する学生の集客をサポートして頂きました。

ブートキャンプの様子
また、生成AIを活用した旅客案内サービスの実証実験として、「JR東海AIナビ」を開発し、名古屋駅でフィールドテストを行った事例を紹介しました。
▪️今後のオープンイノベーションプログラム
8月25日に開催予定のオープンイノベーション推進サロンのキックオフイベントでは、参加者が交流し、学び合う場を提供します。
また、予定されている2025年のオープンイノベーションプログラムは以下の通りです。
9月 大企業や自治体によるテーマ課題発表
10月 関係者ミートアップ
11月 イノベーターによるアイデアピッチコンペティション

▪️WeWork に期待すること
最後に、ゲストのお二人よりメッセージを頂きました。
JTIS 石川氏:
一番重要なのは人脈ではないでしょうか。WeWork が今後も人とのつながり、会社とのつながりを作るプラットフォームとして、その輪を繋げていくことに期待しています。
JEIS 山田氏:
コミュニティチームを含めて弊社の業務概要と当部署の仕事内容をよくわかってくれる WeWork 。プッシュ型でなく雑談の中で面白い会社を紹介してくれるようなプロフェッショナルなコミュニティマネジメントを期待しています。

懇親会の様子
激変する経営環境の中、WeWork Japan は今後も、オープンイノベーションプラットフォームとして、多様なバックグラウンドを持つ入居メンバーと、一度きりではない中長期な共創関係性を築く持続可能なエコシステムの構築に取り組んでまいります。