変化する、生産性の測定方法
従業員エクスペリエンスの定義
メンバーシップ密度とエクスペリエンス密度
ワークスペースのユーザーは3種類
人を第一に考えたワークスペースをデザインする
人を中心としたワークスペースなら WeWork
ワークスペースはエンゲージメントを育み、イノベーションを刺激し、生産性を向上させる強力なツールです。では、最適なワークスペースとはいったいどのようなものなのでしょうか? 本シリーズ、Science of Spaces(スペースの科学)では、意図をもって実現されたデザインの科学が、どのように労働環境を全人的な体験に変えられるかを探っていきます。今回は、ワークプレイスにおける効率性の最適化が、従業員エクスペリエンスの測定と密接に関係している理由をご紹介します。
変化する、生産性の測定方法
従来のワークスペースにおける効率性の測定方法は、総使用可能面積(Usable Square Footage、以下USF)を総人数で割るというとてもシンプルなものでした。しかし、このロジックは未来のワークスペースを考えたときに、必ずしも現実的でないという点を忘れてはいけません。
これまでの間、不動産会社はコスト削減を目的とし、できるだけ面積を小さくしてポートフォリオを最適化することを使命としてきました。しかし、長年にわたり、ワークスペースの高密度化と一名あたりのUSFの増加を目の当たりにしてきた今、多くの人々が以前よりも効率性が低下していると感じています。
これまでのやり方で効率性を測るのは、非人間的なことです。というのは、総USFを総人数で割った抽象的な計算式を使うと、たしかに明快な数字が出るものの、その場所で実際に働いている人々がワークスペースをどのように体験しているか(エクスペリエンス)を考慮していないからです。
そこで、WeWork のアクティビティ・ベースド・ワーキング・プラクティスチームは、現在のワークスペースを調査し、人間中心のワークスペースはどのように見えるべきか、感じるべきかを判断しました。
従業員エクスペリエンスの定義
従業員とワークスペースにおけるエクスペリエンスは、さまざまな意味を持ちます。あるときは、おもてなしのレベルを意味し、またあるときは食事をともにしたり、チームとして集まったりすることを意味します。しかし、ここでは「アクセス」、つまり仕事をするための静かな場所や同僚とコラボレーションするためのスペースなど、必要なときに必要なものを見つけられることを「エクスペリエンス」と定義します。
効率性とエクスペリエンスのバランスを考えることは、理想的なオフィススペースづくりを目指す際には、絶対に欠かせません。しかし、効率性とエクスペリエンスはしばしば相反するため、なかなか簡単にはいかないことも真実です。
実際に WeWork でも、効率性とエクスペリエンスのバランスをとるという自らの信念が試されました。たった一年で従業員数が爆発的に増えたニューヨークの WeWork 拠点で、効率性(より少ないスペースにより多くの人を入れる)か、エクスペリエンス(ユーザーが必要なときに必要なものを見つけられる)かのどちらが重要かを早急に判断しなければなりませんでした。そして、そのどちらにも妥協するつもりはありませんでした。
メンバーシップ密度とエクスペリエンス密度
WeWork では、総USF/総人数の典型的な測定方法を「メンバーシップ密度」と呼んでいます。ただ、これは総人数の100パーセントが毎日現れると仮定しているため、不完全です。現実には、多くの大企業の平均出社率は総従業員数の約65%で、WeWork も例外ではありません。
WeWork 本社をリニューアルする際、私たちは、従業員の平均的な出勤パターンをもとにプランを考えました。総USF/現在の総人数が、オフィスにいるときに人々が感じることをよりよく表していると考えたからです。WeWork では、これを「エクスペリエンス密度」と呼んでいます。私たちは、エクスペリエンス密度をロジックの軸とし、本社をシェアが可能かつアクティブな環境に変えるという目標のもと動きました。
しかし、現実に近づけることはできても、エクスペリエンス密度もメンバーシップ密度と同じように非人間的・非現実的であることは、驚くことではありません。なぜなら、総USF/現在の総人数は、あらゆるものにアクセス可能なユーザーで、彼らは自分が何にアクセスできるかを正確に把握し、それを使う権限があると感じている存在、つまり理論値に等しいからです。
オフィスに足を踏み入れたとき、自分があらゆるワークスペースにアクセスできていると感じられるか? エクスペリエンス密度がまだ理論値にとらわれているとしたら、人間性や現実が突き抜けるスポットはどこなのか? これらの視点で自社および従業員の来し方を振り返ったとき、エクスペリエンス密度が屈折しはじめたのです。
ワークスペースのユーザーは3種類
私たちの調査では、ワークスペースのユーザーは3種類に分けられることがわかりました。
1, 大胆なユーザー
どこにいても歓迎され、あらゆる共有スペースを活用します。まれな存在で、少数派です。
2, 典型的なユーザー
ふだんはチームの近くにいて、主に自分がいるフロアの共有スペースを活用し、必要なときに他のフロアに出向きます。ユーザーの大半を占めています。
3, リミテッドユーザー
何らかの理由でチームの近くにとどまり、自分のエリアを超えて共有スペースに行くことはほとんどありません。ワークスペース内で2番目に大きいグループですが、提供されているスペースのごく一部にしかアクセスできないと考えています。
職能やワークスタイルに関係なく、ワークスペースにおいて従業員が周囲の空間とどのように接するかは、彼ら自身が何を手に入れられるかを信じるかにかかっています。美しい数字を求めることが可能な計算式でなく、ユーザーの知覚がエクスペリエンス密度を形成するのです。
私たちは、それまでに発見したことをすべて理解するため、ホワイトボードの前で何度も夜を明かしました。その中で、自分たちがメンバーシップ密度やエクスペリエンス密度のあとに続く、非人間的な計算式を危うく新たに作りだしてしまうところだったことに気づいたのです。そうではなく、私たちのねらいは最適なプランを実現するためのストレステストを確立することでした。そこで、次のような問いを自らに投げかけるようになりました。
・リミテッドユーザーが混雑感を感じるのは、同じワークスペースを利用する典型的なユーザーと比べると、どのような場合か?
・音、光、美観などの環境的要素は、どのように混雑感に影響するのか?
・どの程度の距離だと、ユーザーはアクセスしづらいと感じるのか?
新しいフレームワークを開発するのでなく、前提をくつがえすような問いを投げかけることで、WeWork はスペースのプログラミングやデザインをよりスマートにし、すべての人にとってより良いものにすることができるのです。
人を第一に考えたワークスペースをデザインする
WeWork の責任は、従来の常識に挑戦し、従業員つまり人をすべての活動の中心に据えることです。大企業がワンフロア全体を利用するケースから、フリーランサーがひとりでホットデスクを試すケースまで、私たちは学んだことを実践に活かし、データを使ってより思慮深く、包括的なワークスペースを創造するデザインチームとして働いています。
私たちは効率性とエクスペリエンスが融合する限界の外側からテストし、学び、自らをもテストすることで、あらゆる人のためのワークプレイスを継続的に改善しています。
人を中心としたワークスペースなら WeWork
WeWork Thanksgiving Tower(米国)