デジタルという手段で地方に恩返しを
“変化を起こす” ではなく「本当にやりたいことに事業が寄ってくる」
いまこそ、本気の構造改革を
オフィスも「所有」から「利用」する時代
テクノロジーと仲間で地方創生を
今回お話を伺ったのは、株式会社チェンジ 代表取締役兼執行役員社長 福留 大士 (ふくどめ ひろし)さん。株式会社チェンジは、『ふるさとチョイス』を運営する株式会社トラストバンクの親会社でもあります。
コロナの状況下でも飛躍的に成長している理由や、事業にかける思いをお話しいただきました。
【目次】
・福留 大士さんプロフィール
・デジタルという手段で地方に恩返しを
・ “変化を起こす” ではなく「本当にやりたいことに事業が寄ってくる」
・いまこそ、本気の構造改革を
・オフィスも「所有」から「利用」する時代
・テクノロジーと仲間で地方創生を
*この記事は、前編・後編の2部構成です。後半も併せてご覧ください。「チェンジ × WeWork 対談! オフィスは“所有”から “利用”へ」
【福留 大士さんプロフィール】
中央大学法学部卒業後、1998年にアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。政府官公庁グループに所属し、人や組織の変革、IT戦略立案などに従事。2003年に株式会社チェンジを設立し、代表取締役に就任。各種事業の立ち上げから東証1部上場に至るまで、あらゆるプロジェクトを経験。2018年12月に株式会社チェンジの代表取締役兼執行役員社長に就任。
デジタルという手段で地方に恩返しを
——— 初めに、御社の事業内容を教えてください。
福留さん:
我々は、デジタル・ローカル・ソーシャル、3つのキーワードが重なる部分を事業領域にしています。いわゆる “デジタルの力を使って、地方の社会課題を解決する” 事業をしています。ひと言でいうと、「デジタルトランスフォーメーション × 地方創生」です。
——— 地方創生・活性化に注目したきっかけは何だったのでしょうか?
福留さん:
私は鹿児島で生まれ育ち、18歳で上京しました。思い返せば、上京してからというものの、まったく地元に関与してきませんでした。よく考えてみれば、地元は自分が18歳になるまでひたすら投資してくれていたのに、自分は何の恩返しもできていないなと。
株式会社チェンジ 福留 大士さん (撮影時のみマスクを外しています)
今、自分は東京にいて、これからも東京にい続けると思うのですが、東京にあるお金や人を地方に分散させることで、地元はもちろん、たくさんの思い入れのある地方が元気になるようなビジネスがしたいと思いました。
——— それをDXとのかけ算で実現されていくのですね。
福留さん:
そうですね。ITやデジタルというのはあくまで手段であり、それを何に適応させるかは志によると思います。「デジタルで医療を良くしたい」という人もいれば、「教育を良くしたい」という人もいいます。何にイノベーションを起こすか、何の価値を上げるかというのは、人や会社それぞれだと思いますが、我々の場合は、その手段を用いて地方の課題解決をしたいと思っています。
“変化を起こす” ではなく「本当にやりたいことに事業が寄ってくる」
——— ここ数年で、御社の事業ドメインが変化したかと思いますが、どのように世の中を捉えて、進むべき道を決めていらっしゃるのでしょうか?
福留さん:
私は、やりたいことをとことん突き詰めれば、事業のチャンスは生まれると信じています。
多くの人は、もともとやりたいことがあったり、仕事を離れても夢中になれることがあったりすると思うんです。
私の場合は、「本当は地方創生とかやりたいんだよね」とずっと思っていて、実際に少しずつですが、ずっとやっていました。
先ほどの、デジタル・ローカル・ソーシャルの3つそれぞれの分野に興味があって、バラバラとですが動いていました。最初はバラバラでも、そこにはやりたいこと『志』があるので、だんだんパーツが集まって形になり始めた、そんなイメージです。
いまこそ、本気の構造改革を
——— コロナ禍で何をやるべきか悩む事業者も多いかと思いますが、どのように動くべきだとお考えですか?
福留さん:
コロナを乗り越えた後は、事業の体質が強くなっていると思うんですよね。今だから、このような時だからこそ、単にやり過ごすのではなく、特に大企業は本気で構造改革をしたほうがいいと思います。
順調な時は、本当は問題があっても、それを見過ごしてなんとなく時間が過ぎていってしまうのですが、危機的な状況こそ、膿を出し切るというか、マイナスを本格的に変えるチャンスです。
この機会をうまく活用して、ガラリとビジネスを転換したり、根深い課題にメスを入れていくべきだという思いで、「何とか前向きに捉えて、やれることをやりましょう。やり過ごすことだけはやめましょう」と伝えたいです。
——— 膿を出す・メスを入れるというのは勇気がいることですよね。
福留さん:
そうですね。これはもう覚悟の問題というか、トップの人間が向き合わないといけないことから逃げないということですね。
時間が過ぎればなんとかやり過ごせるのではないかと思ってしまいがちですが、それではおそらく構造的な問題はずっと引きずったままで、なんともならない。だからこそ、そこをちゃんとやるというリーダーとしての覚悟は求められるだろうなと感じます。
オフィスも「所有」から「利用」する時代
——— 後半で詳細をお伺いしますが、 少しだけ先にお伺いすると、今後、オフィス戦略で重要になってくる考え方とは何でしょうか?
福留さん:
前提として、オフィスを無くすという選択肢はないと思っています。
固定のオフィスは無くしてもいいと思うのですが、やっぱり人が集まる場所はすごく大事だなと。視覚と聴覚でのコミュニメーションはオンラインで共有できますが、リアルに一緒にいるからこそ生まれる感覚は別物ですよね。
その感覚は、ご飯を一緒に食べることと通じると思います。美味しさを共有しながら、その場を共有することが、人間関係を進化させたり、深めたり、親しみを感じさせたりするのだと思います。
だから、チームをちゃんと作っていくときに、リモートワーク一辺倒だと無理だなと。1年ほどリモートワークをやってみて強く思いました。
とはいえ、リモートワークをやり始めた人は、「リモートワーク快適だな」「あれ?通勤時間無駄じゃん」って思う人も多くいます。だからこそ、会社がどのように働き方を設計するか、いかに最適な配分をするかが重要です。
もう1つは、やはりビジネスを推進する上で、コストはとても大事です。
例えば、車は「稼働しない資産」だといわれています。1日に2時間しか乗らないということは、1日のうちの8%にこれだけお金かけるんですか?っていうのが、車が「所有」から「利用」に変わっていく理由ですよね。
オフィスも同じで、「そんなに使わないのに、本当に固定的に持っている必要がありますか?」と。さらに、リモートワークが増えるとオフィスの稼働率ってすごく下がるので、なおさら「固定で持つ必要性がありますか?」「そこに固定費を払うんですか?」という話なんです。
週5でオフィスに出社という体制ならいいと思うのですが、これからは「所有」を「利用」に変え、「固定費」を「変動費」に変えていく、この辺りが新しいオフィスの戦略の鍵になると思います。
テクノロジーと仲間で地方創生を
——— 今後実現したいこと、力を入れていきたいことを教えてください。
福留さん:
地方の経済は、日本のGDPの約67%を占めるんですよね。労働人口でいうと80%近いです。そんな地方を、どうやって持続可能なものにしていくか、どうやって地方の社会を作っていくかを、テクノロジーの力と仲間の力でやっていきたいです。
それこそ、WeWork とも地方創生についてタッグ組んでやっていきたいですし、地銀や自治体などのパートナーと一緒に地方創生をやっていくのが、これからの我々のビジネス目標です。