
2026年4月、WeWork Japan は株式会社JTB Inbound Trip と提携し、厳選されたホテルラウンジなど外部パートナーの空間を活用した、新たなコワーキングサービスの実証実験を沖縄・那覇市で開始しました。本取り組みは、地域活性化と新たなワークスタイルの創出を目的としたものです。
第一号拠点となったのが、サウスウエストグランドホテルのラウンジです。オープンを記念し、2026年5月14日に「CHAMPRU TECH – AIウェルビーイング 島カンファレンス -」を開催しました。
沖縄独自の「チャンプルー文化(多様な文化が混ざり合う価値観)」と最先端テクノロジーを掛け合わせ、新たな価値創造を目指す――。そんな想いを込めた本イベントには、多様な企業や関係者が集い、沖縄から始まる新たなコミュニティ形成とイノベーションの可能性を発信しました。
<イベント概要>
CHAMPURU TECH – AIウェルビーイング 島カンファレンス –
日時:2026年5月14日 16:30~18:00
会場:サウスウエストグランドホテル 11階
登壇者:
・フォーシーズ株式会社 取締役、琉球大学 特命教授(アントレプレナーシップ担当)/
中小企業基盤整備機構 アドバイザー(スタートアップ) 兼村 光 氏
・ 株式会社ディープコア Director, Venture Growth &Partnership 玉岡 靖弘 氏
・ 株式会社YStory 代表取締役 Janet Yu 氏
・ ヘルスケアテクノロジーズ株式会社 エンタープライズビジネス本部 事業開発部 部長 井上 駿平 氏
・ 株式会社JTB Inbound Trip 統括部長 廣門 正人 氏
・WeWork Japan 代表取締役社長 兼 CEO 熊谷 慶太郎
1. ご挨拶:WeWork Japan 代表取締役社長 兼 CEO 熊谷 慶太郎
「WeWork は、オフィスに必要な設備やサービスをすべて備えた、オールインクルーシブ型のワークスペースを提供しています。スタートアップ企業をはじめ、大企業、外資系企業、自治体、教育機関など、多様な企業・団体にご利用いただいています。
WeWork の大きな特徴の一つが、創造性を刺激する空間デザインです。WeWork 専属のデザインチームが世界共通の基準で空間設計を行っており、働く人の生産性やウェルビーイング向上にもつながっています。
そして、WeWork 最大の価値が「コミュニティ」です。各拠点にはコミュニティチームが常駐し、入居者同士の交流やマッチングを支援しています。年間3,000回以上のイベント開催に加え、企業同士の連携や新規事業の創出も生まれています。また、WeWork は2024年よりソフトバンク株式会社の100%子会社となり、現在は全国展開をさらに加速しています。札幌、名古屋、大阪、福岡、そして今後は広島など、地方都市への展開も進めています。
こうした中で、次なる展開先として注目したのが沖縄です。今回、JTB沖縄様と連携し、プロジェクト第1号拠点としてサウスウエストグランドホテル様にご協力いただきました。このラウンジ空間は、WeWork のデザインコンセプトとも非常に親和性が高く、利用者の皆様には WeWork の世界観を体感いただける環境になっています。
また、今回の取り組みでは、スタートアップや企業利用だけでなく、デジタルノマドや観光客、地元ビジネスパーソンなど、多様な人々が交わる新たなコミュニティ形成を目指しています。
さらに今回の大きな特徴は、従来の月額契約ではなく、「30分単位」で利用できる新サービスに挑戦している点です。通常のWeWork拠点と違いコミュニティチームは常駐していませんが、必要な時間だけ気軽に利用できる、新しいワークスタイルの実証を、ここ沖縄からスタートします。現在、この取り組みは多くのメディアからも注目をいただいており、さまざまな媒体でご紹介いただいています。
沖縄から始まるこの新しい挑戦を、ぜひ皆様と一緒に盛り上げていければと思っております。」
WeWork Japan 代表取締役社長 兼 CEO 熊谷 慶太郎
2. ご挨拶:株式会社JTB Inbound Trip 統括部長 廣門 正人 氏
「私からは、JTB Inbound Tripが今回のプロジェクトに参画した背景と、この取り組みに込めた想いについて、お話しさせていただきます。
私たちJTB Inbound Tripは、JTBとTrip.comグループのネットワークを活かし、日本各地への訪日誘客や地域の観光価値向上に取り組んでいます。私たちが目指しているのは、単に旅行者を送客することではなく、人の流れを新しい地域の価値につなげていくことです。
今回 WeWork とご一緒することになったのも、まさにその考え方が重なったからです。
WeWork には、人と人、人と企業が自然につながり、新しいアイデアやビジネスが生まれるコミュニティがあります。一方、JTBには、地域と世界をつなぎ、多様な人々との接点を創り出してきたネットワークがあります。
この二つが組み合わさることで、「観光」と「ビジネス」という枠を越え、多様な人が集い、新たな交流や共創が生まれる場をつくることができると考えています。
その最初のチャレンジの場として選んだのが沖縄です。沖縄は国内外から多くの人が集まるだけでなく、新しいライフスタイルや働き方を受け入れる土壌があり、このプロジェクトの可能性を広げるフィールドとして大きな魅力があります。
本日は、AIやヘルスケアをはじめ、さまざまな分野で活躍される皆さまにお集まりいただいています。この場所から新たな出会いや共創が生まれ、沖縄、そして日本各地へと広がっていくことを心から期待しています。」
3. ゲスト講演① 「思想と構造」― 沖縄スタートアップ・エコシステムについて
フォーシーズ株式会社 取締役、琉球大学 特命教授(アントレプレナーシップ担当)/中小企業基盤整備機構 アドバイザー(スタートアップ) 兼村 光 氏
「今回は、『何をやっているか』という事例紹介だけではなく、『どのような考え方と構造でエコシステムが成り立っているのか』という点を中心にお伝えしたいと思います。
沖縄のスタートアップ支援は、2008年頃から始まりました。特徴的なのは、制度や補助金ではなく、『人づくり』からスタートしたことです。その象徴が『Ryukyufrogs』であり、人材育成を起点にコミュニティが形成されてきました。
その後、2022年には沖縄県の基本計画に初めて『スタートアップ』が明記され、個別支援から『エコシステムづくり』へと考え方が変化していきました。現在は、行政、金融機関、大学、コミュニティ、国の支援機関など、多様な主体が連携しながら支援を行っています。
また、沖縄は2024年に『スタートアップ・エコシステム拠点都市』に選定され、『沖縄型ブルーエコノミー』を掲げています。観光、エネルギー、産業、ヘルスケアなど、島嶼地域ならではの課題を起点に取り組みを進めています。
沖縄の特徴は、『資本主導』ではなく『制度変革型』であることです。つまり、お金や制度から始めるのではなく、「地域を良くしたい」という想いを持つ人やコミュニティから始まっているという点です。その中心には、『制度的起業家』と呼ばれる存在がいます。自社の利益だけではなく、地域全体を変えることを目指して活動する人たちです。
沖縄では、まずコミュニティが育ち、その後に制度化されるという『下から上』の構造でエコシステムが形成されてきました。その象徴的な場が『KOZA ROCKS』です。スタートアップだけでなく、街づくり、音楽、福祉、伝統芸能など、多様な人が交わるコミュニティイベントとして開催され、イベントを通じて、沖縄の伝統や音楽といった文化とテクノロジーを融合させ、ビジネスの力へと変換しています。
私たちが重視しているのは、ユニコーン企業を生むことだけではありません。地域を変える『構造変革者』が世代を超えて受け継がれていくこと。そして、その熱量をコミュニティとして仕組み化していくことです。
ぜひ今後、沖縄ともつながっていただければと思います」
フォーシーズ株式会社 取締役、琉球大学 特命教授(アントレプレナーシップ担当)/中小企業基盤整備機構 アドバイザー(スタートアップ) 兼村 光 氏
3. ゲスト講演② コミュニティ型AIインキュベーターの可能性
株式会社ディープコア Director, Venture Growth & Partnership 玉岡 靖弘 氏
「ディープコアは2018年に設立した、AIおよび先端技術領域に特化したVCです。『技術で世界を変えたい』と考える起業家や研究者、エンジニアを支援しており、投資だけでなく、コミュニティ運営にも力を入れているのが特徴です。この8年間で、80社以上のスタートアップが生まれ、一部には投資も行っています。また、東京だけでなく地方との連携にも力を入れており、各地でAIや起業に関するイベントや勉強会も開催しています。
ディープコアの投資領域としてはAIを軸にしながら、ウェルビーイングと親和性のある医療・ヘルスケア分野領域のスタートアップにも多く投資をしています。最近はChatGPTなどの普及によって、メンタルヘルスやウェルビーイング領域でもAI活用が広がっており、非常に可能性を感じています。
沖縄との関わりとしては、県の認定VCとしての活動や、設立当初からOISTとの連携が挙げられます。コミュニティでは技術勉強会やハッカソン、交流イベントなどを定期的に開催しており、オンラインでの参加も可能です。「AIに興味がある」「起業家や研究者とつながりたい」という方がいれば、ぜひ応募を検討いただけたら嬉しいです。
8年間コミュニティを運営してきて感じるのは、エンジニアや研究者に事業経験者や専門知識を持つ方が交わることで、大きな化学反応が起きるということです。そうした出会いが生まれる機会を、とても大切にしています。
AIが便利になる一方で、ウェルビーイングの観点では人間らしさも重要です。沖縄にはそのヒントがあると感じています。最後になりますが、この後登壇されるYStoryさんも、私たちのコミュニティから生まれたスタートアップです。」
4. ゲスト講演③ AIとエビデンスで支える更年期ウェルビーイング
株式会社YStory Janet Yu 氏
「株式会社YStoryは、更年期領域に特化したデジタルヘルスサービスを提供している2023年に創業したスタートアップです。主に35歳以上の女性を対象に、AIを活用したパーソナライズ型のヘルスケアプログラムを提供しています。
創業当初から、『エビデンスのあるソリューションを作る』ということを重視しており、現在も京都大学産婦人科と共同研究を進めています。
更年期は、女性ホルモンの急激な変化によって、身体的・精神的な不調が現れる時期です。症状は200種類以上あるとも言われ、人によって大きく異なります。また、時間とともに症状も変化していくため、一律のケアでは対応が難しいという課題があります。私たちはAIを活用し、一人ひとりに合わせた行動変容プログラムを提供することで、症状改善を目指しています。
更年期市場は非常に大きく、日本だけでも約2400万人が対象となります。また、更年期による離職や生産性低下による経済損失は、日本国内で年間約2兆円とも言われています。そのため、個人の健康課題だけでなく、企業や社会全体の課題としても注目されています。
私たちは京都大学と共同で臨床試験も実施しており、アプリ単体で7割以上の方に症状改善が見られました。臨床試験の結果もグローバルでの論文発表や学会発表に採択されています。
現在は、一般ユーザー向けセルフケアアプリ「JoyHer」と、企業向けウェルビーイング支援サービス「JoyHer Enterprise」を展開し、7万人以上の2Cユーザーと多数の上場企業に利用されています。さらに昨年は、米国メイヨークリニックのアクセラレータープログラムにも採択され、現在はアメリカ・アジアを含めたグローバル展開も進めています。
今後は、沖縄を起点に全国の地域へウェルビーイング支援を広げていきたいと考えています」
4. ゲスト講演④ 沖縄で作る令和の地域医療インフラ
ヘルスケアテクノロジーズ株式会社 エンタープライズビジネス本部 事業開発部 部長 井上 駿平 氏
「今日は、日本の医療課題と、課題に対して我々が取り組んでいるオンラインヘルスケア事業についてお話しします。
日本の医療制度は世界的に見ても非常に優秀です。世界的に見ても非常に優れた皆保険制度のおかげもあり、低負担で医療サービスを受けることができます。一方、年々医療費は増加の一途をたどり、加速度的に進む少子高齢化の余波も受け、制度を維持する現役世代は減少しています。実際に医療の現場では医師や看護師が不足しているものの、救急現場を始めとした医療現場の業務負担も大きくなっています。
そのような課題を解決するために、『誰もが意識せず健康になれる、健康であり続けられる社会の実現』を目指して、ヘルスケアテクノロジーズを立ち上げました。食事、歩数などの健康データと医療データなどを活用し、AIと医療職の経験と知識を組み合わせながら、一人ひとりに最適な健康支援を提供しています。
その中心となるサービスが「HELPO(ヘルポ)」です。24時間体制で医師・看護師・薬剤師などに健康医療相談ができ、必要に応じてオンライン診療も利用できます。特に沖縄では、医療アクセスや小児救急の逼迫といった地域課題があります。そこで現在、沖縄県医師会と連携し、夜間小児オンライン診療の実証的な取り組みを行っています。
オンラインで症状を確認し、本当に対面受診が必要な方を適切に病院へ案内することで、救急医療現場の負担軽減と持続可能な地域医療を目指しています。これまでは中部エリア限定の取り組みとなっていましたが、GW明け以降、県全域へエリアを拡大して取り組みを進めています。
さらに今後は、生活習慣病の重症化予防を目的にAIを活用した生活習慣改善支援にも取り組みます。通院と通院の合間もAIが食事や運動をサポートし、そのデータを医師と共有することで、診察時だけではなく日常的に患者さんをサポートできる環境を提供します。
沖縄は、医療DXのモデルケースになれる地域だと思っています。医療機関、行政、企業の皆様と連携しながら、沖縄発の新しいヘルスケアモデルを全国へ広げていきたいと思っています」
左上から、WeWork Japan 代表取締役社長 兼 CEO 熊谷 慶太郎 、株式会社JTB Inbound Trip 統括部長 廣門 正人 氏<br /> 左下から、株式会社ディープコア Director, Venture Growth &Partnership 玉岡 靖弘 氏、フォーシーズ株式会社 取締役、琉球大学 特命教授(アントレプレナーシップ担当)/中小企業基盤整備機構 アドバイザー(スタートアップ) 兼村 光 氏、株式会社YStory 代表取締役 Janet Yu 氏、ヘルスケアテクノロジーズ株式会社 エンタープライズビジネス本部 事業開発部 部長、井上 駿平 氏<br />
本カンファレンスは、AIがもたらす圧倒的な「効率」と、沖縄が古くから大切にしてきた「人間性」や「幸福感」が高度に融合する未来像を描く場となりました。
また、AIが最適解を導き出す時代だからこそ、沖縄らしい「ゆんたく(交流)」や、お酒や音楽を楽しみながら熱狂を共有する文化が、最先端技術を社会に根付かせる重要な役割を果たしていく可能性も感じられました。
WeWork をハブとして、外部の高度なビジネス知見と、地元で培われてきたコミュニティが「チャンプルー(混ざり合う)」ことで、沖縄は単なる観光地にとどまらず、世界に通用する新たな事業や価値を生み出す「新しい社会モデルの発信地」へと進化していく――そんな期待を抱かせるイベントとなりました。





