
コロナ禍を経て、出社回帰が進む昨今、従業員が出社したくなる「オフィス空間づくり」に取り組む企業が増えているようです。そこで、 WeWork の入居メンバーである 株式会社みんなの社食、 jinjer株式会社 、そして WeWork Japan が、それぞれの視点からノウハウや事例を紹介するセミナー「出社回帰時代のエンゲージメント施策~”社食”で実現する『会社に来たくなる』オフィス空間の作り方~」を11月11日、WeWork リンクスクエア新宿 で開催しました。
<イベント概要>
出社回帰時代のエンゲージメント施策~”社食”で実現する「会社に来たくなる」オフィス空間の作り方~
日時:2025年11月11日(火)15:00-18:30
会場:WeWork 新宿Dタワー
登壇者:
・株式会社みんなの社食 代表取締役CEO 齋藤 武仁 氏
「オフィスを”人が集まる場所”に変える、食のチカラ」
・WeWork Japan Head of Community 遊上 和義 氏
「オフィスの在り方から変えるWeWorkのエンゲージメント Case sutudy」
・jinjer株式会社 人事総務本部 本部長 末廣 征 氏
「ジンジャーが実践している人事課題に対する取り組みについて」
左から jinjer株式会社 末廣 征 氏、WeWork Japan 遊上 和義、株式会社みんなの社食 齋藤 武仁 氏
▪️出社回帰の現状
齋藤:
「コロナ禍が明け、世界的な企業が次々と出社回帰を宣言し、出社への機運が高まっています。日本でも、大手企業をはじめ有名IT企業が、出社日を決めたり出社の手当を出すなど、工夫をしながら出社回帰を進めているのが現状です。一方、出社がルールとなれば社員が自然に出社するかというとそうではなく、反発があるのも現状です。例えば、数百名単位で署名活動が起きたり、元々フルリモート前提で採用されたのに出社に戻すのはあり得ないと労働組合から反発があったり、転職されてしまったりと、一筋縄ではいかないようです。
企業が出社回帰を求める理由を考えてみますと、一つ目は、生成AIが進化してきたことによって、ビジネス不確実性というのが増しているという点があげられるでしょう。二つ目は、リモートワークによる弊害です。リモートワークは、ワークライフバランス向上のほか、エリアに縛られない採用ができたり、固定費を削減できたりという企業側のメリットもあります。しかし、業務効率、エンゲージメント、イノベーションの起きやすさなどは対面には敵わないというデメリットがあり、そのデメリットがメリットを上回ってきたという点です。この二点の掛け算によって、企業は出社回帰を求めるるのではないかと考えています。これは単なる人事総務の課題ではなく、経営戦略として非常に重要な課題ではないでしょうか。
少し話が変わりますが、Googleの社食に行かれたことはありますか? 実は世界一の社食はGoogleだといわれており、先月、サンフランシスコまで見学しに行ってきました。そこでなぜ社食にこんなに力を入れてるのかインタビューしたところ、理由は『美味しい食事は社員を繋ぎとめる役割がある』『社員の健康を守り、生産性向上を図ることができる』そして一番大きな理由は、『組織文化やイノベーションの源泉となる』というものでした。GmailやGoogle Earthも社食での雑談から出たアイディアだと言われています。
また、みんなの社食を導入頂いている企業の、人材開発の責任者の方は、『プロダクトの創出力を向上させるには社員同士が活発に意見を交わし、コミュニケーションの質を高めることが不可欠』とおっしゃっています。そして印象的だったのが、『より円滑なコミュニケーションをさせるためには、ただ出社し同じ空間を共有するだけでなく、自然と会話が生まれるような仕掛けが必要』であるということです。さらに、『お互いの人となりを知ることが組織力を下支えし、新たな価値創造につながる』とおっしゃっていました。
まとめますと、経営陣や人事部は、オフィスに戻ってきてほしいというのが本音ですが、従業員からすると出社したくない。しかし無理に出社させようとすると反発がおき、転職されてしまうこともある。どうしたら自然とオフィスに行きたがるような環境作りをできるかがとても大事になってくる。そこで、アクセスがよく綺麗なオフィスというハード面ももちろん大事ですが、出社した時のソフトコンテンツを用意する。ハードとソフト両面から出社体験を向上させることが必要ということになるのではないでしょうか」
▪️オフィスを”人が集まる場所”に変える、食のチカラ
齋藤:
「ここで、弊社の出社率を引き上げるサービス『みんなの社食』をご紹介します。会社に、週1回の週替わりデリバリー型社員食堂を提供するサービスです。提供するのは、普段並ばないと絶対食べられないという名店のメニューです。カレーが主力商品ですが、マーボー豆腐やガパオ、親子丼などもあり、今後ラーメンも増える予定です。また、週ごとに店が変わっていくのが特徴です。このような圧倒的に強烈なコンテンツがあると、出社するのが楽しみになり、『次の週は何だろう』というワクワク、実際に食べた時の美味さへ感動、そしてただ食べるだけではなく、みんなで同じ釜のめしを食べ、話し、コミュニケーションをとるというサイクルが毎週繰り返されます。それによって、組織の団結力が高まり、出社するカルチャーが根付いていくという仕組みです。
なお、問い合わせは、従業員数50〜100名程度の組織を持つ企業様が多いです。従業員数が30名までの組織は代表との距離も近く、組織のみんながビジョンの中心に寄っています。それが、50名以上になってくると組織が階層化してくるため、ビジョンから離れたメンバーも増えてきます。そして100名を超えてくると、組織もかなり縦割りになるので、創業者や役員はビジョンに近いけれども社員は全く違う方向を向いているような場合も増えてきます。階層化した組織の中で、『同じ釜のめし』を食べて、従業員とマネージャー、あるいは従業員と経営層といった縦横だけでなく斜めの対角線を増やす。そしてその対角線の『数』と『太さ』を増やしていくのがみんなの社食です。導入いただいたある企業様からは、出社率が2倍に増え、従業員様からも非常に好評だときいています」
セミナー後に実際の「みんなの社食」を体験
▪️オフィスの在り方から変える WeWork のエンゲージメント Case sutudy
遊上:
「 WeWork は世界37か国約600拠点、日本国内では約40拠点に展開しています。全ての拠点で、什器やWi-Fi、フリードリンクサービスなど、ビジネスに必要なあらゆるサービスと創造的なワークスペースをオールインクルーシブで提供するフレキシブルオフィスです。
齋藤さんからもあったように、オフィスの出社率はますます上がってきております。データ(※出典:【CBRE】APAC vs Japan 出社傾向の違い)上でも、週5の出社を望む経営層とハイブリッド勤務を望む従業員と、意識のギャップがあることがわかっています。また、社内エンゲージメントという観点で見ていくと、従業員の満足度が高い企業は生産性や利益率も高く、欠勤率や離職率は低いというデータ(※出典:【CBRE】エンゲージメントを高めるオフィス)もあります。つまり、出社回帰をしつつ、かつ社内エンゲージメントを高めていかないと会社の成長につながっていかないということが読み取れます。また、経営層と従業員の間にある大きなギャップをどれだけ埋められるかという点が出社回帰を進めるポイントになってくると思われます。
話を WeWork に戻しますが、『 WeWork を⼊居先として選ぶ理由』を入居メンバーに調査しますと、立地やビルのグレードという回答ももちろんありますが、半数近くは社内エンゲージメントや生産性向上、社内外のコミュニケーション促進と、ソフト⾯での課題解決を理由としています。オフィスが単なる働く場所ではなく、付加価値を求める場所へと変貌していることがわかります。
その付加価値を作っているのがコミュニティチームの取り組みです。コミュニティチームは、全国で約40拠点ある WeWork 全ての拠点に常駐し、受付業務だけではなく、入居メンバー企業の課題解決やマッチング、イベント企画運営などのサポートも行っているチームです。イベントは年間約3000件、企業マッチングは年間約150件という実績があります。イベントの事例をいくつかご紹介します。
<TGIM>
WeWork は、憂鬱になりがちな月曜日の朝を楽しく過ごし、これからはじまる一週間を有意義なものにすることを目的に、簡単な朝食を提供するイベント「TGIM=Thanks god, it’s Monday」を毎週開催しています。色々な入居メンバー企業の方が参加し、そこで会話、コミュニケーションが生まれる仕掛けです。その日を出社日にしている入居メンバー企業もあるそうです。
TGIMの様子
<⼈事‧総務ミートアップ>
従業員満⾜度向上に課題を持つ企業と、その課題解決につながるソリューションを提供できる企業のマッチングイベントです。⼊居メンバー企業によるワークショップや、⼈事部・総務部のように、異なる企業で同じ職種の方との交流を促進するイベントも開催しています。
<⼤⼈の運動会>
単独企業では開催の難しい運動会を実施し、15社から約100名が参加しました。職場から離れた場でのチームワーク醸成につながりました。
大人の運動会の様子
このように同じ食べ物を食べたり、同じ課題を共有したり、同じ経験をすることで、仕事では話すことがなかった人と話したり、共通の思い出ができたり、新しい知見が得られたりします。すると、仕事そのものや日常の職場に楽しさが生まれます。これらの取り組みがきっかけとなり、出社率が4割上がったという入居メンバー企業の話も聞きました。WeWork は今後も、ハードだけでなくソフトでも複数の魅力があるオフィスを作っていきたいと考えています」
WeWork Japan Head of Community 遊上 和義
▪️ ジンジャーが実践している人事課題に対する取り組み
末廣:
「まず、出社回帰を進めるには、なぜ出社するのかという目的が明確であることが重要だと考えます。例えばパフォーマンス向上が出社の目的だとすると、パフォーマンスが上がることでどんなリターンがあるのかというところまでのストーリーがしっかり設計されており、尚且つマネージャーが従業員にその目的とストーリーをしっかり伝えていくところまで細かく設計されているとよいのではないでしょうか。
このパートでは、出社回帰のような組織課題の改善事例として、弊社が抱えていた『離職率の高まり』という組織課題を、弊社のサーベイを使いどのように改善していったかをお話ししたいと思います」
▪️人事施策を『コスト』から『戦略的投資』へ。経営に与えるインパクト
末廣:
「大切なことは離職という事象に対して感情ではなく、具体的な数字に向き合っていくことだと考えます。会社をより良くするために現在地点の弊社の弱点となるものを考えて仮説を考えました。
通常であればその仮説を元に施策を講じて…となるかと思いますが、弊社の場合、仮説を仮説止まりにせず経営課題に繋げる上で、従業員の声を可視化する組織診断ツールジンジャーサーベイを使い検証していきました。
見つけられた課題は、感覚的ではなく、定量データで経営陣に示し、施策を進め改善することでどのくらい離職率や生産性にヒットするのかをきちんと経営陣が理解することで、施策はコストでなく投資だと捉えられ、戦略的に改善に繋げることができました。
施策としては、例えば、毎月トップメッセージとして、『今、どんな戦略でどんなことやっているのか、何が課題なのか』をまず経営陣でシェアし、それを部長陣に話してフィードバックをもらう、次に部長陣からマネージャー陣に話しフィードバックをもらう。そして一番いい形で従業員に届けるということを毎月行いました。このインタラクティブなコミュニケーションによって経営陣とマネージャーと従業員が繋がり、トップメッセージが全従業員に伝わっていくことで、理念戦略に関するスコアは半年間でかなり改善しました。
他にも、従業員が働きがいを持って働くための制度を取り入れ、半年間で施策を進めたところ、それが離職率にフィットし改善することができました」
jinjer株式会社 人事総務本部 本部長 末廣 征 氏
セミナー後は登壇者と会場の参加者を交えて、実際に「社食」を体験しながら交流するミートアップを開催。参加者からは、「社員のエンゲージメントを高めるヒントを得られた」「従業員のエンゲージメントを正確に把握する必要性を実感した」「既存の福利厚生制度の見直しと同時に社内コミュニケーションとして社食を検討したい」という声が寄せられました。
社食体験
同じ釜のめしで笑顔と会話が生まれる
ロダン(東京都中央区)のカレーを提供いただきました







