更新日:2025.12.04

RAMEN TECH 2025 トークセッションに登壇 WeWork Japan CEOとメンバーが語る「AI時代のグロース論」とは?

2025年10月5日から12日に開催された、福岡市が主催するグローバル・スタートアップイベント「RAMEN TECH 2025」において、WeWork Japan 代表取締役社長 兼 CEO 熊谷 慶太郎 が、入居メンバーの皆様とともに、トークセッション WeWork Japan CEOとメンバーが語る「AI時代のグロース論」に登壇しました。外資AIスタートアップ、日系スタートアップ、証券取引所の多様な視点から、未来の成長を切り拓くAI時代の戦略を語りました。

 

<イベント概要>

WeWork Japan CEOとメンバーが語る「AI時代のグロース論」

日程:10月9日(火) 18:30-20:00

会場:大名カンファレンス Link Stage

登壇者(写真右より順に):

・株式会社JPX総研 取締役常務執行役員 平野 剛 氏

・SHE株式会社 取締役CFO 森山 大樹 氏

・Auxia Japan株式会社 ソリューションストラテジスト 池田 綾香 氏

・WeWork Japan 代表取締役社長 兼 CEO 熊谷 慶太郎

熊谷:本日MCを務めさせていただきます、代表取締役社長 兼 CEOの熊谷と申します。このステージは、WeWork Japan と WeWork をご利用いただいているメンバー企業が、AI時代のグロース論をテーマに日本と世界、企業側と支援側、国境やポジションをダイナミックにクロスさせながらスタートアップエコシステムの未来について話していきたいと思っております。まずは、自己紹介をお願いいたします。

平野:JPX総研の平野です。JPX総研は、日本取引所グループにおけるデジタル事業の戦略的展開の中心となる組織体として設立されました。グループ各社のデータ・デジタル事業を集約し、M&Aや高度人材活用なども含めた、柔軟性・機動性に長けた事業展開に取り組んでいます。「証券取引所」の枠組みにとらわれない新たなカルチャーの醸成を目的に、WeWork に入居しています。

JPX総研の企業戦略を簡単にご紹介すると、証券市場に関係することを前提に、例えば株価のデータや上場企業のディスクロージャーのデータをパートナー企業の方と協業しながら充実化したり、AI等の先端技術を使ってユーザーの方にも大量の情報を活用いただいたりといったことを通じて、日本市場のプレゼンスを高めていく、あるいは日本企業の情報を世界に広めていくことに取り組んでいます。

ここ数年のスタートアップ企業との関わりをご紹介すると、国内外で株式市場関連のスタートアップ、テクノロジー関連のスタートアップと協業・資本参加の事例が生まれています。WeWork で出会った、AIを扱うスタートアップとは、AIで企業のガバナンスの情報を構造化し、投資家向けに情報を提供するという協業を始めています。

森山:SHE株式会社の取締役CFOの森山です。SHEは、2017年に設立した主に女性向けのキャリアスクールを運営しているシリーズCの企業です。現在、累計受講者数20万名以上、アクティブなユーザー1万2千 〜3千名の女性がSHEで学んでいます。ただ学ぶだけでなく、SHEで学んだスキルを実際に社会に届け、活躍してもらうというサービスですので、大手事業会社と関係性は大切であり、事業戦略としてもCVCに入っていただいています。 

サービスは大きく分けて3つのラインで提供しており、1つ目が「SHElikes(シーライクス)」というパソコンひとつでどこでも働けるスキル獲得のサポート、2つ目は「SHElikes」によってスキルを獲得した人材(リスキル人材)と企業をマッチングさせ、リスキル人材が活躍するまでサポートするサービス「SHEworks」。3つ目が、その人の人生をマネーリテラシー向上の側面でサポートする「SHEmoney」です。累計受講者者は20万人以上にのぼります。 

池田:Auxia Japan株式会社の池田です。2012年に新卒でGoogleに入社し、昨年までシリコンバレーで働いていました。シリコンバレーにいるとやはり一度はスタートアップに挑戦してみたいという気持ちになり、プライベートで3人目の子供の出産をきっかけに、Auxia Japanに参画しております。Auxia は、シリーズAのシリコンバレー発祥のAIマーケティングのスタートアップです。「マーケティングチームに次世代の力を」というビジョンを掲げており、マーケターの方の最強の右腕になるというのがミッションです。現在創業3年目で、今春、日本支社を創設しその創設メンバーの一人です。

我々のプロダクトは、ファーストパーティーデータやメール、アプリWebといったチャネルを持っていらっしゃる企業に向けて、3つのエージェントを提供しています。1つ目が「意思決定エージェント」です。マーケターの方がゴールと制約条件を設定するだけで、ユーザーにどういうメッセージをどのタイミングで誰に何を出せばゴールにつながるか、最適解を導いてくれます。これまでルールベースで考えていたものを全部AIに書きかえています。2つ目が「アナリストエージェント」です。マーケターの方は施策の結果を検証する際、エクセルでデータをダウンロードしてピボットテーブルを組み合わせていらっしゃることが多いかと思いますが、それが不要になります。チャットボットが出てくるので、「効果の高かったセグメントを出してください」とチャットをすれば結果がわかります。3つ目は、「コンテンツエージェント」です。ユーザーごとに最適なメッセージを自動生成し、高精度な出し分けを実現します。この3つのエージェントを提供しています。

熊谷:最後に、WeWork についてもご説明させてください。2010年にニューヨークで創業した WeWork は、世界37か国・600拠点以上でフレキシブルオフィスを展開しています。(2025年7月時点) 内装、wifi をはじめ仕事に必要なインフラを備え、すぐに業務を開始できるワークスペースを提供しています。期間は月単位での契約が可能で、規模も1名から数百名まで拡大縮小ができます。国内では、2026年5月にオープン予定の「 WeWork THE VILLEDGE SAPPORO 」の北海道から、福岡の「 WeWork ゲイツ福岡」と2025年8月にオープンした「 WeWork 天神ブリッククロス」まで、約40拠点ございます。国内外600以上ある拠点は、横断的な利用が可能です。

入居されているメンバー企業は、スタートアップから大企業、外資系企業と様々です。最近は自治体のメンバーが増えてきました。8月に「 WeWork 天神ブリッククロス」がオープンしましたので、福岡市との連携を強化していきたいと考えています。なお、「 WeWork 天神ブリッククロス」は、「 WeWork 大名 」からのリロケーションで、席数を1.7倍の523席に増やしました。「天神駅」直結という抜群のアクセスと、入り口を開けた瞬間から博多湾が望める眺望の良さが特徴です。また、通常の WeWork フロア以外にも「THE LOUNGE by WeWork 」というビル共用ラウンジをプロデュースいたしました。こういった WeWork の新しい展開がスタートしています。

3分でわかる WeWork

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では、質問パートに入りましょう。まずJPX総研さんが、先ほどご紹介の中で、WeWork で出会ったスタートアップ企業と積極的なコラボレーションの成果が出ているというお話しをしていただきましたが、スタートアップとの最新の取り組みについて教えていただけますか。

平野:私たちJPX総研は、スタートアップの方と一緒に価値創造していきたいというスタンスで仕事をさせていただいています。なぜスタートアップなのかというところですが、少し具体的に申し上げますと、例えば取引所日々莫大なデータが発生します。上場企業のディスクロージャーはページ数で年間150万ページぐらいあり、これを人間が1ページを1分で見るとすると、土日を使っても2年近くかかる計算です。それらのデータを人が処理して取引の判断をするのは、かなり難しいことです。また、データがどんな使われ方をするかを、取引所でずっと働いている人間が考えていても広がりがありません。新しいスキル、新しいシェアを持っている方々と一緒に、新しいユースケースを取り入れながら、莫大な情報を意思決定につなげようとすると、やはりスタートアップの方と一緒に取り組むことがベストなアプローチだと考えています。

それからクロスボーダーという点で言うと、私どもはニューヨークの WeWorkオフィス を利用しています。そこでイスラエルのAIのスタートアップと知り合い、AIを使ってマーケットエクスプローラーというサービスを始めました。それは、上場会社3,800社分のディスクロージャーのデータをAIに読み込ませ、様々な分析評価を加えた上で12か国の言語で提供するものです。こういったことは、取引所の力だけではできません。ですので、WeWork を使って新しいスキル、タレントを取り入れることができるというのは非常にメリットがあると思います。今後も、国内だけではなくてクロスボーダーでスタートアップとの協業に取り組んでいきたいです。

熊谷:ありがとうございます。では続きましてSHE様にお伺いします。福岡への進出の経緯と今後のビジネス展開について教えていただけますでしょうか。

森山:現在働く女性の人口は3千万人といわれており、まだまだSHEのシェアが伸ばせる中、オフラインでの事業展開を拡大させ、日本全国リーチしていくという方針があります。4年前に大阪に進出し、現在コミュニティ拠点は、東京・名古屋・大阪にあり、会員のうち7割ほどの方が、東名阪を中心とした首都圏の方です。次の展開として、女性の人口比率が高い福岡に進出しようという考えがあったのと、一つの会社さんからかなり強く福岡出店のご希望いただいたということもありました。地方展開は非常にハードルが高いのですが、ちょうど「WeWork 天神ブリッククロス」がオープンするタイミングでしたし、WeWork のサポートによって出店できることも福岡を選んだ理由の一つです。 

福岡で自治体や大企業とコラボレーションしながら受講生を増やし、またスキルを獲得した受講生が福岡のビジネスシーンで活躍できる世界を描けるんじゃないかと思っています。

熊谷:ありがとうございます。 WeWork も一緒に成長していければ嬉しいです。では次に、Auxia Japan の池田様に質問です。2025年5月から日本の WeWork をご利用いただいていますが、日本でのビジネスが拡大フェーズに入っていると思われます。今後のビジネス展開と、マーケットのポテンシャルについて教えていただけますでしょうか。

池田:今年の春に WeWork に入居し、Auxia Japan を創設しました。AIマーケットのポテンシャルですが、2点あるかと思っております。1点目が、現場のマーケターの声によると、やはり顧客が増えれば増えるほど、メッセージを打つのがすごく複雑になり、それに限界を感じているそうです。従来のようにルールベースで考えていくと無限に出てくるユーザーへのメッセージをAIで行う。そのような場面で、高いポテンシャルがあるのではないでしょうか。

2点目は、今は、「ゼロクリック時代」と呼ばれる通り、Google検索をするとAIが要約したものが検索結果に出てくるので、サイトに行かなくてもいいですね。また、チャットGPTが代わりに検索をしたり要約をするのでするのでサイトに行って何かを探すという行動がなくなってきています。このような状況で自社サイトに誘導するための顧客獲得単価も高くなる中、既存顧客にフォーカスするのが良いのではないかというのが我々のプロダクトの考え方です。例えば、AIを使ってすでに会員の方やサイトに来たことがある方に向けてベストなメッセージをベストなタイミングで送るというのが、時代に合っているのではないでしょうか。時代の流れからしても、日本はAIマーケティングのポテンシャルがあると考えています。

なお、今、弊社のサービスを導入いただいているのは大企業が多いですが、今後、例えば地方銀行さんをはじめ、ローカル企業さんとも一緒にお仕事をしていきたいです。その際は、ぜひ WeWork にお手伝いいただきたいですね。

熊谷:ぜひお手伝いさせてください。では、もう一問。生成AIの活用と、今後の事業戦略について皆様に順番にお聞かせください。

平野:生成AIについては2つの側面があると思ってます。1つはどの企業でも同様かと思いますが、業務の効率化やカスタマーエクスペリエンスの向上に活用したいです。例えば、上場会社において、新商品の業績がよかったり、会社で事故があったりなど、ポジティブでもネガティブでも、投資家に対して情報開示しなければいけないような出来事(イベント)があったとします。その際、ほとんどの企業は、そのイベントが証券市場でどう取り扱われるのかわからず、取引所の分厚いルールブックを見ながら判断されていることだろうと思います。そこで、生成AIを活用し、「この規則に従って、こういう形で開示してください。開示内容のイメージはこんな感じになります」というサポートができれば、カスタマーエクスペリエンスの向上につながると思うのです。

2つ目は、取引所独自の話になりますが、ユーザーサイドでの生成AI活用を意識した市場データの配信に努めています。先ほどご説明しましたとおり、取引所は莫大なデータを日々生み出しています。そのデータをソースとして、多様な関係者の皆様にご活用いただけるようデータを構造化するのに生成AIが活用できるのではないかと思っています。例えば、企業のCO2の削減への取り組みや廃棄物の処理などの情報を、莫大なテキストデータから拾い投資家が評価に繋げるのは難しいことです。情報を構造化し生成AIできちんと処理できるようになることは、業界だけでなく、社会全体にとって意味があることではないでしょうか。

森山:SHEは、新しくスキルを獲得して実際に働くまでをつなげるサービスです。生成AIは新しいスキルですので、みんなが同じところから学びをスタートでき、SHEの受講生にとって大きなチャンスとなるでしょう。ただその反面、人間ならではの人間力、マインドスキルのようなところこそが、生成AI時代を生き抜いていくために、SHEが受講生に提供できることではないかと考えています。社会で働くには、色々な人と働くコミュニケーション能力や、新しいことに自己肯定が高く挑戦できるマインドスキルのようなものも必要だと考えます。生成AIのスキルをハードするとソフトスキルを合わせた人材もデジタル人材として僕たちが育成できるんじゃないかと思っています。 

また、生成AIに関して様々なコンテンツや学習の場がありますが、学習したから企業で働けるかというとそれはちょっと違うと思っています。実際に企業が何に困っているのか、その解決のためにどういうインプットやスキルが必要かを逆算したコンテンツを開発し、しっかりと実社会で活躍できる人材を育成していきたいと考えています。 

池田:私たちはAIの会社ですけれども、AIを使うことで私たち自身の業務が楽になったということがあります。例えばお客様へのプレゼン資料を作る際に、これまでエクセルのピボットテーブルを使って作成していましたが、AIの機能を使うことで不要になりました。このようにイノベーションに乗っかっていくことで不要な業務を削除し、その空いた時間でもう少しハイレベルなことや戦略的なことを考えられるようになりました。ですので、生成AIを使いこなしていくことが企業の成長を押し上げる推進力になるんだろうと思っています。

熊谷:皆様、ありがとうございました。 

WeWork Japan としては今後、世界600拠点以上のネットワークに、カード一枚でアクセスできるという利便性を生かしながら、グローバルなオープンイノベーションプラットフォームを作り、ご登壇いただいた皆様をはじめ、メンバーの皆様との更なるコラボレーションの実現を目指して参ります。本日はありがとうございました。

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