更新日:2025.06.03

[Work by the Numbers] Z世代は仕事に何を求めるか?

はじめに

文化の影響とインパクト

郊外への回帰

仕事を辞める意思

ワークライフバランスと学習機会

企業の価値観

柔軟性

影響力、より良いワークライフバランス、そして価値観を共有できる雇用主が上位に

ブラッドリー・リトル著
2022年9月27日

Work by the Numbers(数字で見る仕事):Work by the Numbers は、仕事・働き方と不動産業界における最新トレンドや調査、アンケートを深く掘り下げたレポートです。(この記事は WeWork Global の翻訳記事です)

はじめに

米国労働統計局によると、2020年時点でZ世代(おおよそ1997年から2012年生まれ)は労働力全体の12.6%を占めています。ミレニアル世代が就職氷河期やリーマンショック、高い失業率と景気回復の鈍化のさなかで社会に出たのに対し、Z世代はパンデミックによる混乱や人手不足など、全く性質の異なる労働市場に直面しています。世界的な不確実性と仕事に対する様々な選択肢のなかで、若い労働者たちは先輩世代とは異なる優先順位や価値観を形成しつつあります。

今後、Z世代は労働力においてさらに大きな割合を占めるようになると予想されており(2030年までに労働力の30%に達すると予測)、彼らのモチベーションや発想の源を理解することは、働き方の未来を予測するのにも役立ちます。

 

文化の影響とインパクト

2022年7月、アメリカの企業口コミサイト「Glassdoor」は、企業に対する評価を集めたデータベースを分析し、5段階評価で最も高い評価を受けた職種および企業、勤務地を分析しました。

結果として分かったのは、Z世代とミレニアル世代では、仕事において最も重視する点が異なるということです。ミレニアル世代では、高収入で自律性も得られる仕事、例えば不動産業者やフルスタックエンジニアなどが最も高く評価されました。

ミレニアル世代とそれより上の世代は仕事における安定を求める傾向にありますが、この調査ではZ世代の労働者が「文化を形成し、社会に影響を与える機会を得られる仕事」を求めていると結論付けています。 具体的に挙げると、Z世代に最も人気なのは、企業のリクルーターやマーケティングマネージャー、ソーシャルメディアマネージャーといった職種でした。

 

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郊外への回帰

パンデミックが流行しはじめた最初の数ヶ月間、多くの若者が生活環境を変えました。2020年4月に実家に戻ることを選択した3,200万人の成人のうち、80%がZ世代だったのです。そして、世界が再び活動的になった今、彼らが急いで大都市に戻ることはありません。2021年のZ世代の労働者の平均年収はわずか3万2,500ドルで、これは標準的な初任給水準です。また、デロイトの調査によると、生活費の高騰が最大の懸念事項となっています。その理由は明白です。

柔軟な働き方の選択肢がこれまでより増えたことで、労働者は、郊外をはじめ、手頃な家賃で生活できる環境を容易に選ぶようになりました。先ほどの「Glassdoor」の2022年7月段階での調査によると、Z世代の労働者にとって最も人気の高い就業場所は、アリゾナ州スコッツデール、バージニア州アーリントン、アイダホ州ボイジーでした。

彼らが選択するような、地に足がついた行動は理にかなっています。2022年夏、ニューヨーク市の平均家賃は月額5,000ドルを超えました。低所得の若い労働者は家賃の値上げで外出機会が減少しています。あわせて、デロイトの調査によると、Z世代の回答者の46%が給料日前の生活に追われており、生活費を賄えないのではないか不安を感じていると回答しました。また、43%が、生活費を賄うために、パートタイムあるいはフルタイムの副業に就いています。

 

仕事を辞める意思

Z世代の労働者と他の世代を明確に区別する​特徴の一つが、自分に合わない仕事を辞める意思が他の世代よりはるかに強いということです。2022年にデロイトがZ世代の労働者14,808人とミレニアル世代の労働者8,412人を対象に実施した調査では、Z世代の回答者の40%が今後2年以内に仕事を辞める予定であると回答したのに対し、ミレニアル世代ではわずか24%でした。両世代の意見は一致し、Z世代の35%、ミレニアル世代の32%が、次の仕事が決まっていないまま今の仕事を辞めると回答しました。

これは、Z世代に代表される若い世代が、これまで以上に自分に合わない仕事を辞めがちで、「大規模退職」が当たり前となる可能性を示唆しています。デロイトによる同じ調査によると、過去2年間でZ世代の労働者が仕事を辞めた理由の第1位は給与でした。経験の浅いエントリーレベルの職種で給与が低いのは珍しくありませんが、生活費の高騰により、こうした安い賃金を人々が許容し受け入れること自体が難しくなっています。また、ワークライフバランスの向上と、教育・能力開発の機会も、上位の転職理由となりました。

 

ワークライフバランスと学習機会

競争力のある賃金が、物価上昇を懸念するZ世代の労働者を引き付けることは明白です。しかし、給与は若い才能にとって動機付けの一つにしか過ぎません。デロイトによると、Z世代の労働者が雇用主である企業に魅力を感じる最大のメリットは「良好なワークライフバランス」で32%でした。2位は「教育・能力開発」で29%、3位は「高い給料」で24%でした。

 

企業の価値観

Z世代の労働者は、自身の価値観とマッチする仕事に就くことを求めています。37%が、個人的な倫理観に合わないという理由で、仕事や配属を拒否したことがあると述べています。

今後2年以内に退職することを検討していると回答した人のうち、57%は雇用主の社会的影響力、52%は多様性と包摂性を重視した職場づくりに取り組む雇用主の進捗状況、56%は持続可能性へのコミットメントに不満があると回答しました。

 

柔軟性

もう一つの重要なポイントは柔軟性です。先のデロイトの調査によると、Z世代の回答者のうち4分の3が、より融通のきく勤務形態を好む理由として「コストパフォーマンス」「仕事以外の情熱を追求する時間」「家族や友人と過ごす時間の増加」の3つを挙げています。高い失業率とハッスル文化に支えられたミレニアル世代は、労働市場の逼迫により人材確保が容易だったため、雇用主にとってある意味理想的な存在でした。しかし、支払われた報酬に値する分の仕事だけをこなし、それ以上のことはしないという「静かなる退職」に言い表されるように、Z世代の労働者に対して期待以上の働きを求めることは、より困難にもなっているのです。

とはいえ、Z世代が仕事を選り好みするのには理由があります。彼らは、急激に高まる格差と世界的な不確実性に直面しています。そして、ミレニアル世代の燃え尽き症候群が蔓延しているのを目の当たりにしています。多くの都市で家賃が賄えないほどの給与水準が定着する現在の労働市場において、若い労働者がより良い仕事の未来を求めるのは、驚くべきことではないのかもしれません。

 

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