株式移転とは?
株式交換との違い
株式移転のメリット
株式移転のデメリット
手続きの流れ
上場企業の株式移転例
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会社の組織再編の1つである株式移転は、事業拡大や新規事業への参入などで検討される手法です。本記事では、株式移転とはなにか、株式交換との違いやメリット・デメリットなど、株式移転について解説します。
株式移転とは?
株式移転とは、既存の株式会社がすでに発行しているすべての株式を、新たに設立する会社に取得させることです。新たに設立した会社は親会社(株式移転設立完全親会社)となり、既存の会社は子会社(株式移転完全子会社)となります。
株式移転には、1社で株式移転を行う「単独株式移転」と、2社以上の会社が新たに会社を設立し株式移転を行う「共同株式移転」の2種類があります。単独株式移転は経営と所有の分離を目的とし、共同株式移転は経営統合を目的とする場合が多くあります。
株式移転では会社法773条1項5号により、株式移転の対価として、子会社の株主へは親会社の株式交付が行われるため、子会社となった会社の株主は、新たに設立した会社の株主となります。
ちなみに、株式移転を行うことができるのは株式会社のみで、有限会社や持分会社は行うことができません。
株式交換との違い
株式交換とは、子会社となる会社の株式すべてと、親会社となる会社(既存の会社)の株式の一部を交換することです。株式移転との大きな違いは、会社の株式を「新設した会社」に取得させるか、「既存の会社」に取得させるかという点です。
株式移転と株式交換はどちらも、現在発行している株式を100%取得してもらい、完全親会社・完全子会社になるという点では同じですが、株式交換は、既存の会社が100%の支配権を持つこととなるため、おもに企業を買収する際の手法として用いられます。
株式移転のメリット
1 多額の資金が必要ない
株式移転では、事業譲渡や株式譲渡と違い、対価として新設する会社の株式を発行すればよいため、多額の資金を用意する必要がありません。
2 少数株主の排除と完全子会社化が可能
株主総会の特別会議で、株主全員の同意がなくても3分の2以上の賛成を得られれば、少数株主を強制的に排除し、完全子会社化することが可能です。完全子会社化することで意思決定を迅速化し、円滑な事業を行うことができます。
3 柔軟性の高い経営統合が可能
吸収合併と違い、株式移転後も子会社はグループ企業でありながらそれぞれ法人として存続するため、柔軟性の高い経営統合が可能です。賃金や人事制度など、グループ企業内で大きく隔たりがある場合でも、時間をかけてゆっくりと制度を統一することができます。雇用や給与体系、人事制度などの急激な変更がないため、従業員のモチベーション低下や反発が起こりにくいといえます。
4 売り手側の子会社が別法人を維持できる
吸収合併における消滅会社の権利義務は、存続する会社に承継されます。株式移転なら子会社は別法人として存続できるため、対等な立場を維持した統合から従業員の抵抗を軽減することができるでしょう。
株式移転のデメリット
1 株価が下落する恐れ
株式移転する企業が上場企業の場合、株価が下落する恐れがあります。要因としては、会社が増えることによる管理コストの増加が挙げられます。株価下落のリスクがあると株主は株式移転に賛同しないことが想定されるため、親会社が子会社を運営する仕組みをしっかりと説明し、株式移転後は利益が上りそうだというイメージを株主に持ってもらうことが必要です。
2 株主構成が変動
複数の会社で株式移転を行う共同株式移転の場合、株主構成が変動します。単独株式移転の場合は特に気にする必要はありませんが、共同株式移転を行う場合は、今後の事業に悪影響が出ないか十分に考える必要があります。
3 諸手続きが必要
株式移転では、さまざまな手続きが必要となります。株主総会の特別議会での承認、株主への通知および公告、場合によっては債権者保護手続きなどが必要になります。
そのため、株式移転は最終契約日から効力発生日まで数か月かかり、早くても2か月、場合によっては6か月以上かかることもあります。
債権者保護手続きが必要な場合は、新設完全親会社の登記申請日前日までに、債権者保護手続きを完了しなくてはいけません。間に合わなければ、株式移転が無効になります。
手続きの流れ
1 株式移転計画書の作成(会社法772条、773条)
株式移転計画書を作成します。計画書には、親会社の商号、住所、事業目的、株式総数、定款事項、役員構成、資本金、準備金、株式移転の対価を最低限明記する必要があります。
2 事前開示書類の備置き(会社法803条)
株式移転計画などに関する書類を、株主総会の2週間前の日または、株主への通知日・公告日のいずれか早い日より備置します。
3 株主総会(会社法309条2項12号、804条)
株主総会の特別決議において、株式移転計画の承認を得ます。
4 反対株主の対応(会社法806条)
株式移転計画に反対の株主は、株式を公正な価格で買い取ることを請求できます。買取請求が可能な期間は、効力発生の20日前から前日までです。
5 株券の提出手続き(会社法219条1項8号)
株式移転完全子会社となる会社が株券発行会社の場合、効力発生日までに株券提出を求める旨の公告・通知を効力発生日の1か月前までに行います。
6 効力発生・登記(会社法915条、925条)
株式移転は、親会社が設立登記することで成立します。完全親会社が設立登記し株式移転の効力が発生すると、親会社は子会社の株式を100%取得することができます。
7 事後開示書類の備置き(会社法811条、815条3項3号)
株式移転から6か月間は、親会社と子会社ともに株式移転の結果を記した事後開示書類を本店で保管します。
上場企業の株式移転例
1 株式会社KADOKAWA・DOWANGO
株式会社KADOKAWA・DOWANGOは、老舗出版社のKADOKAWAとIT企業の株式会社ドワンゴが株式移転により経営統合し、2014年10月1日に誕生しました。
KADOKAWAがつくり上げてきたアナログコンテンツと、ドワンゴが得意とするデジタルコンテンツを融合させ、ネット時代の新たなコンテンツをつくり上げることを目的とした経営統合です。
株式会社KADOKAWA・DOWANGOは、2015年「カドカワ株式会社」と商号を変更し、2019年7月には「株式会社KADOKAWA」と商号を変更しています。
株式会社KADOKAWAが WeWork で実現したオフィス改革、業務のDX化について、くわしくはこちら。
2 楽天インシュアランスホールディングス株式会社
楽天インシュアランスホールディングス株式会社は、楽天株式会社の子会社である「楽天生命保険株式会社」「朝日火災海上保険株式会社」「楽天少額短期保険株式会社」「楽天インシュアランスプランニング株式会社」「株式会社楽天アンセルインシュアランス」の5社の株式移転により誕生した中間持株会社です。
5つの子会社は、主に楽天会員を対象に、それぞれ別々の商品やサービスを提供していましたが、「イノベーションを通じて人々と社会をエンパワーメントする」という楽天グループの理念実現のためには子会社を統一化する必要があると判断されました。
中間持株会社が5つの子会社を統括することで、迅速で的確な意思決定ができるようになり、多様なニーズに対応することが可能となりました。
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* 2022年6月時点
・本記事の内容は、公開日時点の情報をもとに作成しています
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