法人とは?
法人の種類
それぞれの法人で働くメリット・デメリット
主な法人とその特徴
法人成りするメリット
まとめ
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「法人」という言葉は、ビジネスシーンやニュースで頻繁に耳にしますが、その正確な意味や種類について、自信を持って説明できる方は意外と少ないかもしれません。個人事業主とは何が違うのか、「会社」や「企業」とは同じ意味なのでしょうか。この記事では、法人の基本的な概念から、営利・非営利・公法人といった多岐にわたる種類、そしてそれぞれの法人で働くことのメリット・デメリットまで、網羅的に解説します。起業を検討している方や、ご自身のキャリアを考える上で、法人に関する知識を深めたい方はぜひご一読ください。
法人とは?
法人とは、法律によって、人間(自然人)と同じように権利や義務を認められた組織のことです。法律上の「人格(法人格)」が与えられることで、組織そのものが契約の主体となったり、財産を所有したり、あるいは訴訟の当事者になったりすることができます。代表者個人の資産と法人の資産は明確に区別されるため、事業の継続性が保たれ、対外的な信用度も高まります。例えば、銀行からの融資や大手企業との取引において、個人よりも法人の方が有利になるケースが多く見られます。このように、法人格を持つことは、事業を円滑に進め、社会的な活動を安定して行うための重要な基盤となるのです。
個人事業主との違い
個人事業主とは、法人を設立せず、個人そのものが事業の主体となって活動する形態を指します。法人との最も大きな違いは、「法律上の人格」の有無とそれに伴う「責任の範囲」です。法人の場合、事業上の責任は法人自身が負いますが、個人事業主の場合は事業主個人がすべての責任を負います。これを「無限責任」と呼びます。税制面でも違いがあり、個人事業主は所得に応じて税率が上がる累進課税ですが、法人は法人税が適用されます。事業所得が一定額を超えると、法人化した方が税負担を抑えられる場合があります。
その他の似た言葉との違い
「法人」と混同されやすい言葉に「会社」や「企業」があります。それぞれの意味は異なります。「会社」とは、会社法に基づいて設立された営利目的の法人、具体的には株式会社や合同会社などを指します。つまり、会社は法人という大きな枠組みの中の一つのカテゴリーです。一方、「企業」は、営利を目的として継続的に経済活動を行う組織全般を指す、より広義な言葉です。これには法人格を持つ会社だけでなく、個人事業主も含まれます。したがって、「法人」は法律上の区分、「会社」は営利法人、「企業」は経済活動の主体と覚えておくとよいでしょう。
法人の種類
法人は、その設立目的によって大きく3つに分類できます。利益を構成員に分配することを目的とする「営利法人」、利益の分配を目的としない「非営利法人」、そして公的な目的のために設立される「公法人」です。それぞれの法人が社会で果たす役割は異なり、設立の根拠となる法律や制度も様々です。
営利法人
営利法人とは、事業活動によって得た利益を、株主や出資者といった組織の構成員に分配することを目的として設立される法人です。その代表例が「会社」であり、会社法で定められた株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類が存在します。これらの法人は、市場経済の中で商品やサービスを提供し、利益を追求することを使命としています。利益の分配が目的であるため、株主や出資者へのリターンを最大化することが経営の重要な指標となります。日本の経済活動の大部分は、この営利法人が担っており、雇用の創出や技術革新など、社会に与える影響も非常に大きいと言えます。事業の自由度が高く、株式発行など多様な方法で資金調達が可能な点も特徴です。
非営利法人
非営利法人とは、社会貢献活動や会員同士の共益など、営利を目的としない事業を行う法人を指します。「非営利」とは利益を上げてはいけないという意味ではなく、事業で得た利益を株主などに分配せず、その法人が掲げる本来の活動目的のために再投資するという意味です。例えば、NPO法人(特定非営利活動法人)、一般社団法人、一般財団法人、社会福祉法人、学校法人、医療法人などがこれに該当します。これらの法人は、行政の手が届きにくい分野での社会的な課題解決や、文化・学術の振興など、公益性の高い役割を担っています。設立にはそれぞれの根拠法に基づいた手続きが必要であり、活動内容に応じて税制上の優遇措置が受けられる場合があります。
公法人
公法人とは、国の行政の一部を担うなど、公的な目的のために特別な法律に基づいて設立される法人です。国や地方公共団体そのものも広義の公法人に含まれますが、一般的には、それらとは別に特定の公共事業を行うために設立された組織を指します。具体例としては、独立行政法人(例:日本学生支援機構、理化学研究所)、地方独立行政法人(例:公立大学法人、都道府県立病院)、特殊法人(例:日本放送協会(NHK))、その他に健康保険組合や土地改良区などがあります。これらの法人は、国民生活の安定や社会基盤の整備といった、国や地域全体の利益に資する活動を行います。その運営は法律によって厳しく定められており、利益追求を第一の目的としない点で営利法人とは大きく異なります。
それぞれの法人で働くメリット・デメリット
営利法人で働くメリットは、成果が給与や昇進に反映されやすく、実力次第で高い収入を得られる可能性がある点です。多様な業界や職種が存在し、キャリアの選択肢も豊富です。一方、デメリットとしては、常に利益追求が求められるため、業績に対するプレッシャーが大きく、競争が激しい環境であることが挙げられます。
非営利法人で働くメリットは、社会貢献性の高い事業に携われるため、強いやりがいや使命感を感じられる点です。デメリットは、営利法人と比較して給与水準が低い傾向にあることや、活動資金が寄付金や助成金に依存することが多く、組織の財政基盤が不安定になりがちな点です。
公法人で働くメリットは、雇用の安定性が非常に高く、福利厚生も充実している点です。デメリットとしては、法律や規則に基づく業務が多く、年功序列の風土が根強いため、個人の裁量が小さく、柔軟な働き方がしにくい場合があります。
主な法人とその特徴
世の中には様々な種類の法人が存在します。ここでは、特に私たちの生活やビジネスに身近な法人の形態をいくつか取り上げ、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。これから起業を考えている方や、就職・転職活動中の方は、法人ごとの違いを理解しておくことが重要です。
株式会社
株式会社は、株式を発行して出資者(株主)から資金を調達し、その資金をもとに事業を行う会社形態です。日本で最も多く設立されている法人であり、社会的信用度が高いのが特徴です。出資者である株主は、出資額の範囲内で責任を負う「有限責任」となります。経営は取締役などの専門家が行い、所有(株主)と経営が分離しているのが原則です。株式上場によって大規模な資金調達が可能になるなど、事業拡大を目指す場合に適しています。デメリットは、設立費用が他の会社形態より高く、法的な手続きや情報開示の義務が複雑である点です。
合同会社
合同会社(LLC)は、2006年の会社法施行により新設された、比較的新しい会社形態です。最大の特徴は、出資者全員が有限責任社員であり、原則として出資者自身が経営も行う「所有と経営の一致」にあります。株式会社に比べて設立費用が安く、定款によって利益の配分や権限などを自由に決められるため、経営の自由度が高い点がメリットです。意思決定が迅速に行えるため、スタートアップや小規模な事業に適しています。デメリットは、株式会社に比べて社会的認知度がまだ低く、上場ができないため大規模な資金調達には向いていない点が挙げられます。
合名会社
合名会社は、出資者である社員全員が、会社の債務に対して無限に責任を負う「無限責任社員」のみで構成される会社です。個人事業主の集合体のような形態であり、社員間の強い信頼関係が前提となります。メリットとしては、法人格を持てることや、定款の自由度が高いことが挙げられます。しかし、事業が失敗した場合に社員は個人の全財産をもって返済する義務を負うという、非常に大きなリスクがあります。そのため、現代において新たに合名会社が設立されるケースは極めて稀です。
合資会社
合資会社は、会社の債務に対して全責任を負う「無限責任社員」と、出資額の範囲内でのみ責任を負う「有限責任社員」の両方で構成される会社形態です。無限責任社員が業務執行を行い、有限責任社員は出資を通じて経営に参加します。資金を提供するが出資額以上のリスクは負いたくない出資者と、事業運営に責任を持つ経営者を組み合わせられる点が特徴です。しかし、無限責任社員が存在するという大きなリスクがあるため、合名会社と同様に、現在ではほとんど利用されていない会社形態です。
有限会社
有限会社は、2006年5月の会社法施行によって廃止され、現在は新たに設立することができません。それ以前に設立された有限会社は、法律上「特例有限会社」として存続しており、株式会社の一種として扱われています。当時の有限会社は、役員の任期がない、決算公告の義務がないなど、株式会社に比べて規制が緩やかで、中小企業に適した形態でした。現在も「有限会社」の商号を使い続けることができ、地域に根差した信頼性の高い企業として事業を継続しているケースが多く見られます。
NPO法人
NPO法人(特定非営利活動法人)は、特定非営利活動促進法に基づき、保健、福祉、環境保全、まちづくりなど、法律で定められた20分野の非営利活動を行う法人です。所轄庁からの「認証」を得て設立されます。ボランティア団体などが法人格を取得することで、契約主体となったり、不動産を所有したりできるようになります。税制上の優遇措置があり、社会的な信用も得やすい点がメリットです。ただし、事業で利益を得た場合でも、構成員に分配することはできず、本来の非営利活動に充てる必要があります。
一般社団法人
一般社団法人は、人の集まり(社団)に対して法人格が与えられる非営利法人です。NPO法人とは異なり、事業内容に公益性などの制限がなく、登記のみで設立できるため、設立が比較的容易です。利益を分配することはできませんが、役員報酬を支払うことは可能です。同窓会、学会、業界団体、地域活動の受け皿など、様々な目的で活用されています。一定の要件を満たすことで、税制上の優遇措置が受けられる「公益社団法人」に移行することも可能です。自由度の高さが最大のメリットと言えるでしょう。
一般財団法人
一般財団法人は、個人や法人が拠出した「財産」の集まり(財団)に対して法人格が与えられる非営利法人です。設立には、300万円以上の財産を拠出する必要があります。事業内容に制限はなく、剰余金の分配もできません。設立者の意思に基づき、財産を特定の目的のために維持・運用することが主眼となります。美術館、博物館の運営、奨学金事業、研究助成など、一定の財産を基盤として継続的な活動を行う場合に適した法人形態です。要件を満たせば「公益財団法人」への移行も可能です。
社会福祉法人
社会福祉法人は、社会福祉法に基づき、社会福祉事業を行うことを目的として設立される、特に公益性の高い非営利法人です。高齢者介護施設、障害者支援施設、保育所、児童養護施設などの運営を主な事業とします。設立には所轄庁の厳しい「認可」が必要であり、その運営や財務についても厳格な監督を受けます。その一方で、法人税や固定資産税などが原則非課税となるなど、税制面で非常に大きな優遇措置が講じられています。地域福祉の中核を担う重要な存在です。
法人成りするメリット
個人事業主が事業を法人化することを「法人成り」と言います。法人成りには多くのメリットがあります。最大のメリットは、社会的信用の向上です。法人格を持つことで、金融機関からの融資が受けやすくなったり、大企業との取引が可能になったりするなど、ビジネスチャンスが広がります。また、所得が一定額を超えた場合、個人事業主の所得税率よりも法人税率の方が低くなるため、節税効果が期待できます。役員報酬や退職金を経費として計上できる点も大きな利点です。
より詳しい法人成りのメリットや手続きについてはこちら。
法人成りとは?個人事業主が検討する目安とメリット、手続き方法も解説!
まとめ
本記事では、法人の基本的な意味から、個人事業主や他の言葉との違い、そして営利・非営利・公法人といった様々な種類について解説しました。法人とは、法律上の人格であり、社会的信用や税制面で個人事業主とは異なる特徴を持っています。株式会社や合同会社、NPO法人など、それぞれの法人形態には独自のメリット・デメリットがあり、事業の目的や規模に応じて最適な選択をすることが重要です。これから起業する方、キャリアを考える方にとって、法人に関する正しい知識は、より良い判断を下すための強力な武器となるでしょう。
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