事業用の銀行口座を開設すべき2つの理由
屋号付き口座とは?
屋号付き口座を開設するメリット
屋号付き口座が開ける銀行と特徴
屋号付き口座を開設するために必要な書類と手続き
事業収支を明確にするために、事業用とプライベート用の口座を分けることはとても重要です。開設には少し手間がかかりますが、個人事業主の方には屋号付き口座の開設をおすすめします。
本記事では、屋号付き口座を開設すべき理由やメリット、開設方法、開設可能な銀行とそれぞれの特徴について解説します。
事業用の銀行口座を開設すべき2つの理由
所有口座の数が少ないほうがお金を管理しやすいのではと思うかもしれませんが、個人事業主が事業用口座を開設するべき理由は2つあります。
まず、事業とプライベートの支出を明確に分けるためです。
事業用の銀行口座を開設することで、事業に関する収支が一目でわかるようになります。口座を分けないと事業とプライベートのお金の出入りが混同され、経費として計上できるものの判断が難しくなります。税務調査でも、事業に関係のないプライベートな支出について見せなくてはならなくなるため、分けていると対応がしやすくなります。
次に、確定申告の備えとして便利であるという点です。
最大65万円の特別控除を受けることができる青色申告は、高い節税効果や赤字繰り越しなどさまざまなメリットがあります。一方で、貸借対照表や損益計算書の提出が必要となるため、白色申告よりも対応が複雑です。貸借対照表や損益計算書は、銀行口座の入出金を複式簿記で記帳し、その記帳に基づいて作成します。もし、事業用とプライベート用で口座を分けていなければ、プライベート用の支出においても「事業主貸」などの勘定科目を用いて記帳する必要があり、手間がかかります。
屋号付き口座とは?
屋号とは、個人事業主が使用する事業用の名前を指します。屋号付き口座とは、口座の名義が「屋号+名前」となっている口座のことです。
法人の場合、法律における人格が認められているため、法人名のみの口座「法人口座」を開設することができますが、個人事業の場合は、一部の銀行を除き屋号のみの口座を開設することができません。
そのため、個人事業主が事業用の口座を開設する場合には、「個人事業主名のみの口座」または、「屋号+個人事業主名の口座」を作ることが可能です。
屋号付き口座を開設するメリット
1 取引相手に信頼感や安心感を与えられる
一番のメリットは、顧客や取引先からの信頼感や安心感が増すことです。
たとえば入金先が屋号付き口座であれば、個人名義の口座よりも取引相手に「しっかりと事業を営んでいる」という印象を与えられるでしょう。また、屋号が入っていることで、振込先が間違いないかどうかを一目で判断することができ、取引相手が安心して手続きを行うことができます。
2 事業別に口座を分けられる
複数事業を行っている個人事業主であれば、屋号付き口座を開設することで事業ごとのお金が管理しやすくなります。もし今後、複数の事業を展開する可能性があれば、屋号付き口座を開設したほうがよいでしょう。
屋号付き口座が開ける銀行と特徴
屋号付き口座は、ほとんどの銀行で開設することができますが、銀行によって特徴が異なるため自分に合った銀行選びが必要です。屋号付き口座が開設できる主な銀行は以下の通りです。
- 三菱UFJ銀行
- 三井住友銀行
- みずほ銀行
- りそな銀行
- PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)
- 楽天銀行
- 地方銀行・信用金庫
それぞれの銀行の特徴は以下の通りです。ぜひ銀行選びの参考にしてみてください。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行
メガバンクともいわれる大手銀行で、全国に実店舗があり知名度および信用度が高いというメリットがあります。一方で、口座開設の審査が厳しく、利用手数料が高いなどのデメリットもあります。
りそな銀行
事業用口座は「りそなビジネスダイレクト口座」扱いとなり、月額利用手数料がかかります。振込時、屋号のみの明記が可能です。
PayPay銀行、楽天銀行
PayPay銀行や楽天銀行など、ネット銀行は実店舗がありませんが、口座開設がしやすい、Webの操作性が高い、手数料が安いといったメリットがあります。
地方銀行や信用金庫
地方での信頼度が高く、融資や新規事業の相談など親身に対応してもらえるメリットがあります。ただし、密着している地域以外では、ATM設置数が少なくなるため、全国で取引を行う事業では注意が必要です。
屋号付き口座を開設するために必要な書類と手続き
屋号付き口座の開設で必要となる書類は主に以下の通りです。
- 本人確認書類
- 印鑑
- 開業届
- 屋号確認資料
口座を開設したい銀行の窓口へ必要書類を提出し、審査に通ると開設することができますが、銀行によっては、個人口座を持っていると開設が難しい場合や、個人口座を作ってからではないと屋号付き口座が作れない場合などがあるため、事前にホームページや電話などで確認しましょう。
すでに開業して数年経っている場合には、開業届以外に、確定申告書や青色申告承認申請書でもよい場合があります。
また、口座に記載する屋号を実際に使っている証明が必要です。納税証明書や賃貸契約書、領収書などが挙げられます。
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